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THE 変人
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竜宮城-7

小さくなって行く瀬奈を見て、海斗は気づいていたのかも知れない。もう海斗と瀬奈の居場所は違うのかも知れないと。海斗は瀬奈の姿が見えなくなる瞬間、「ごめんな…?」と呟いた。

海斗を包んだ光は急加速し上方へと一気に走り出す。ジェットコースター…、いや戦闘機に乗っているかのような速さだ。もしタイムマシーンに乗ったらこんな光景なのかも知れない。海斗に光の道を走っているかのように思えた。

幸代の声がますます大きく聞こえて来る。
「海斗さん!海斗さん!海斗さん!」
と。海斗は苦笑いしながら呟く。
「ったく、ウルセーなぁ。セックスの時はあんま声出さないくせしてよー。あ、でもそれ言ったら俺が下手だからとか言われるんだろうなぁ。あいつはいちいち俺につっかかって来るからなぁ。」
しかしその会話のキャッチボールが海斗にとっては実に心地良かったりする。
「部下…、いや妹のように感じてたけど、あいつはあいつなりに女してるよな。それに悪態ばかりついてるこの俺に、あんなに声を枯らしてまで心配してくれるなんてな。幸代か…、名前通り幸せにしてやんねーとな。」
そう言って上を向くと、海面の向こうから太陽の光が見えてきた。その美しいライトブルーの光景が何とも神秘的で心を奪われた。
「こんなにいい世界なのにな…。俺には竜宮城よりもこっちの世界の方がお似合いだ。」
海斗が穏やかな笑みを浮かべながら目を閉じると、いよいよ海斗の体を包んでいた光の塊が海面に接近する。そして海面と触れた瞬間、光の塊は太陽の光と同化し弾け飛んだ。

「海斗さん!海斗さん!海斗さん!」
もうテレパシーではない。幸代の生の声が海斗の耳に響く。
「うるせーなぁ、ったく…」
海斗はゆっくりと目を開ける。
「海斗さん!!」
海斗の目覚めに、更に感極まる幸代。
「オメーの涙で顔がビチョビチョじゃねーかよ。」
「だって…、だって…、うわーん!!」
心の緊張の糸が切れ、泣きじゃくる幸代を海斗はそっと抱きしめた。
「幸代の声のおかげで助かったよ。ありがとうな?」
「うわーん!うわーん!」
病院のベッドの上で自分の胸に抱きつき子供のようになきじゃくる幸代に苦笑いする海斗。そんな2人の姿を穏やかな表情で見つめていた康平と美香は温かい笑みを浮かべて病室から出て行ったのであった。

海斗は幸代の事を強く強く抱きしめながらこう言った。
「幸代、結婚してくれ…」
と。


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