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桃子〜愛と悲しみと憎しみと〜
【ロリ 官能小説】

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うさぎがいない……-1

「あっ! ヤスさん!」
「おい! ヤス! 大丈夫か?」
 同僚たちが慌てて康夫に駆け寄るが、康夫は激痛のあまり貧血を起こしてしまい、答えることもできなかった。
「早くパイプをどけろ! ……こりゃひでぇ……」
 小山康夫は建設作業員、仕事中に崩れて来た足場パイプに脚を挟まれてしまったのだ、そして康夫の膝はあらぬ方向に曲がっていた……。

 小山桃子、小学六年生。
 父の康夫と母の桃枝の三人暮らし、父が事故に遭ったと言う知らせを受けて母と共に病院に駆け付けた、父は右足をギプスで固められ、痛み止めの点滴を受けているせいか少しぼんやりした様子だったが、命に別状はなさそうで少しほっとした。
 だが、桃子はこの事故が自分の運命を大きく変えて行くことになるとは、その時思いもしなかった……。

 
 桃子は少々ぽっちゃりしているものの、とりたてて太っているわけでもないのだが、頬の肉付きが良く下膨れの輪郭のせいか、実際以上に太っている印象を与えてしまう。
 そして少し腫れぼったく見える一重瞼の細い目と眉、小ぶりのわりにでんと座った鼻、小さめだが厚みのある唇は顔の面積を実際以上に大きく、のっぺりと見せる。
 要するにあまり見栄えのしないタイプ、童顔の部類だが愛嬌に乏しく華やかさもないのだ、桃子と言う名前も何となく時代遅れの感じで垢抜けない、顔立ちや体つきが可愛らしければ違って聞こえるのかもしれないが……。
 声にもあまり魅力がない、やや高めのアニメボイス系なのだが、ハスキーなので可愛らしさに欠ける、ハスキーでも低目なら色気もあるのだが……。
 髪型も失敗している。 細い目をごまかそうと眉ギリギリで揃えた前髪、下膨れの輪郭をごまかそうとやや内巻きにしたおかっぱは、自信なさげな印象を与えてしまっている。
 そのうえ勉強も運動もあまり得意とは言えない。 
 勉強はできなくても運動は得意、とか運動は苦手だが勉強ができる、と言うわけではなく、どちらをとってもワースト1〜2を争ってしまうのだ。
 それでも何か一芸に秀でていれば馬鹿にされずに済むことが多い、例えば絵が上手いとかピアノやギターを弾けるとか……あるいはアニメに詳しいとか、モノマネなどで笑いを取れるとかでも良い、大人には取るに足りないことのように見えることでも、他の子ができないことができれば子供なりに一目置かれるものだ。
 桃子にはそんな要素もまるでない、時折自虐ネタで乾いた笑いを取ることはあるものの、それでは一目置かれることには繋がらない。
 少しでも注目されたい、認められたいと思い、誰もが嫌がる役を率先して引き受けたりもするのだが、それも桃子の価値を高めることにはならない。
 要するに、人畜無害でライバル心や嫉妬の対象にもならない上、嫌な役も引き受けてくれるので嫌がられたりハブられたりすることはないものの、軽んじられるばかりで存在感を示せない、要するにいてもいなくても良いが、いれば便利に使えるし、便利に使うのが当たり前になっているので感謝もされない、そういう存在なのだ。
 まあ、それでも、それなりに平穏に小学校時代を過ごして来た……今までは。

 だが、父親の事故以来、雲行きが怪しくなってきた。
 康夫は3か月後に仕事に復帰したものの、痛みや多少の不自由さからは解放されていない。
 康夫は元々仕事熱心な方ではない、今までだって二日酔いで休んだり競輪やパチンコでサボることもあった、そこに膝の痛みと言うもっともらしい口実が加わったのだ、生来の怠け癖が堂々と顔を出し、休む日が多くなって行った。
 収入が以前の半分ほどになってしまった時、ひどい夫婦げんかが勃発して母親は実家に帰り戻って来なくなってしまった。
 元々康夫を快く思っていなかった祖父が母を甘やかして戻そうとしなかったのだ。
 そして離婚話に発展し、母が桃子を引き取ろうとすると父が強く反発した。
 怠けているのではなく、無理をすれば膝の痛みで動けなくなるから仕方がないのだ、徐々にでも快方に向かっている、収入もいずれ元に戻る、と言うのが父の言い分。
 元々怠け者で改善の見込みはあまりないのだから娘を戻してやることなどできない、孫も引き取るから別れてくれ、と言うのが祖父の言い分。
 すったもんだの挙句、桃子は父の元に残ることを選択した。
 父か母かと言われれば母だが、父か母プラス祖父かと言われれば父を選ぶ、桃子は独善的で厳格な祖父が酷く苦手だったし、祖父も出来の良くない桃子をあまり好いていなかった、祖父が嫌っている康夫の血を引いているのだからなおさらだ、桃子は祖父の蔑むような眼の前では自分が今以上に取るに足りない存在、むしろいない方が良いような存在に思えてしまうのだ。
 母は……結局娘への愛情よりも楽な方を選んだ……祖父に甘やかされて育った母はこらえ性がないのだ。

 かくして父との二人暮らしが始まったのだが、依然として父の勤労意欲は上がらない、当然のように生活は困窮した。
 着ている服は古ぼけ、サイズが合わなくなっても新調できない、小遣いもろくにない。
 そのうえ食生活も荒れた、父は料理などするはずもなく、桃子のレパートリーもごく限られていたので当たり前だ、勢い、インスタントやレトルト食品で済ます日々が続く。
 そんな生活の中で、桃子からは明るさと生気が抜けて行き、『軽んじられる存在』から『便利なだけで居ても居なくても良い存在』へと変わって行った。


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