女教師ケイの放課後-7
前方ではふたりがケイを捕えつつあった。ヒールを履いたままでは距離を稼げなかったらしい。
このまま逃げ切るのは無理と判断したのか、彼女は反転して身構えた。
振り向きざま、ケイの右脚が跳ね上がった。五月に対して中段回し蹴りを見舞う。
だが五月の突進スピードが勝った。当たりが浅いため、急所を捉えることができない。
二人の影が交錯した。
ケイの身体が浮いていた。五月によって、勢いそのままにすくい上げられたのだ。
「しまっ……っ」
ケイは押し倒された。背中から落ちるのを避けたため、腹ばいになっていた。
懸命に五月の下から逃れようともがいた。しかし腰を取られて抜け出せない。
逆に力任せに引きずられ、馬乗りの体勢に持ち込まれた。
なんとか脱出しようと分厚い胸を押す。びくともしない。
下から正拳突きを浴びせる。
一発、二発……。
しかし身体の自由を奪われた上、不安定な体勢からのそれは著しく威力と精度を欠いていた。
小うるさそうに、五月に手首を捻じり上げられた。
「うう……」
苦鳴をあげながらも、ケイはあきらめない。五月の下で反転しようと、右に、左に身体をひねる。
抜け出せない。
ならばと、背筋を使って相手を跳ね上げる。
体重をかけられ潰された。
体格に勝る男にのしかかられ、ケイの体力は瞬く間に消耗していく。
万事休すだった。
ようやくケイがおとなしくなった。
肩で息をしながら、僕たちを見据えている。
「こんなことをして……ただでは済まないわ」
美しいまつ毛が揺れている。だが、その目に怯えた色はない。
そこには、あくまで冷静に事態を打開しようとする意志が感じられた。