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THE UNARMED
【悲恋 恋愛小説】

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THE UNARMED-4

「聞いていると思うが、上の方が少しごたついていてな……ヴァナ=ジャヤで内乱もあって今回休戦協定が結ばれたわけだが、いつまた戦が始まるか分からない。今の時点で優勢はヴァナ=ジャヤだが、バージルでお前達はかなりの働きをしてくれた。そこで、我々はガルシア騎士団が自ら傭兵隊に付いて指揮を執ることにしたのだ」
つまりは、あれだろう?
俺達のような傭兵風情があまりに目立ち過ぎては、騎士団としては体裁が悪い。
結局は手柄を自分達の手に、か。
全く、面倒臭い奴等だ。ご苦労なこった。
俺が顔を上げると、何故か三度レイチェルと目が合ってしまった。
何だ、こいつ俺を見ていやがるのか?
俺が顔を顰めると、奴は言う。
「……分かっている。お前達から見れば、我々がお前達の手柄を横取りするように見えるだろう。いや、実際そうなってしまうだろう。お前達にはすまないと思っている。
そのことも含めて、今日は此処にやって来たのだ」
良く言うぜ。
心の中を見透かされたような感覚に動揺しつつも、俺は心の中で毒づいた。
「ガルム・ヴィクセル」
不意に名前を呼ばれ、俺は思わず酒を吹き出してしまいそうになる。
露骨に不機嫌な顔を見せて、俺は奴を睨め付けた。
透き通った琥珀の瞳を俺の黒瞳に突き付けたまま、奴の唇が言葉を紡ぐ。
「お前に少し話したいことがある」


……話したいこととは何だ?
別にあの場で良かったのに、こいつはわざわざ俺を外に連れ出した。
外だと言うのにこの蒸し暑さ、俺は余計に苛立つ。
それなのに俺と相向かうこの女は涼しげに金の髪を揺らす。
ひんやりとした風が一瞬だけ俺を撫ぜて行った。
「この間は殴ってすまなかったな。遅くなったが、謝ろう」
レイチェルの言葉に、俺は思わず鼻白む。
しかし、暑さのせいかそれともこいつの飄々とした言葉のせいか、俺の苛立ちは更に募る。
「謝って何になる? 謝って平手の跡が治るわけじゃないだろ」
「今回のこともそうだ。てめえも悪いと思うなら、申し訳ないと思うなら、俺達の指揮を執るのは辞めろ。迷惑だ」
吐き捨てた俺の言葉に、レイチェルの眉が下がる。
悲しげに、そして請うように首を傾げる。
くそったれ、そんな表情(かお)をしやがって。
「迷惑か?」
「迷惑だ」
しかし俺は断固として言い放つ。
すると、レイチェルは大きく溜息すると面倒臭そうに長い髪を掻き揚げた。
細い指から金の流れが零れる。
その仕草に思わずどきりとする。
しかし。
「……貴様、いい加減にしろ。これほど下出に出てやっているのだから、貴様も大人しく従ったらどうだ。騎士団にいた頃はもう少し従順だと思っていたが?」
レイチェルが放った言葉は、明らかに俺を見下していた。
自分が上にいると言う、絶対的な態度でもって奴は言う。
「本性見せやがったな」
俺は忌々しげに唇を歪める。
「だからどうだと言うのだ」
相変わらず飄々としたレイチェルの言葉。
「それほど私に憤りを感じるならば、一発殴ってみるか?」
肩を竦めて俺を挑発する。
くそったれ、何なんだこの女は!
俺は右肩を後ろに引き、拳を奴に向かって繰り出した。


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