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THE UNARMED
【悲恋 恋愛小説】

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THE UNARMED-24

何度も何度もその言葉を繰り返しながら、ぐったりとした奴の身体を俺の前に座らせて、馬を駆る。
敵も矢も届かない暗い森へと、逃げ込むように馬を走らせた。
「ッ!」
森の中を直走っていると、レイチェルの身体が鞍からずり落ちそうになった。
左手で手綱を握ったまま、右手でずるりと鞍から落ちそうになる奴の腕を掴むも、引き上げるより早く身体が地面に落ちた。
「レイチェル!」
慌てて馬を止め、降りた俺は倒れ伏したレイチェルの元に駆け寄った。
頬を軽く叩き、意識を確認する。
「……ガ……ム」
薄っすらと目を開けたレイチェルに俺は安堵に胸を撫で下ろす。
しかしその安堵も束の間、奴の唇が青くなって行くのを感じ、俺は青ざめた。
細い身体を横たえて、俺はくしゃりと顔を歪めながら何度も何度も奴の名を呼んだ。
しかしレイチェルは小さく首を横に振り、何か言わんと口を開いた。
――さ、よ、な、ら、だ。
声は出なかったが、確かに唇はそう紡いでいた。
――さよならだ。
「……ガルム」
唇が再び別れの言葉を紡ぎ、そして最後にレイチェルはか細い声で俺の名を呼んだ。
途端俺の両の瞳から涙が零れ落ちる。
「レイチェル……!」
そして、レイチェルは俺が今までに見たことがないほど安らかに笑み、静かに、静かに目を閉じた。


――俺は咆哮した。
溢れる涙はどうしても止まらなかった。
泣いて、泣いて、泣きながら俺はこの女を、自分が思っていたよりもずっと深く愛していたことを知った。
くそったれ!
これほどまでに愛しいと、何故今気付く……!
俺はレイチェルの身体を抱き上げて、馬に乗った。
まだ温かなその身体を胸に抱き、俺は馬を駆った。
冷たい風が俺の頬を打ち付ける。
風が鉄錆びた臭いを運び、俺の鼻孔を突く。


血の臭い――此処は戦場。
そこにあるのは剣と血、そして骸。そこに渦巻くは殺意、情欲、そして虚無感。

全てが終わった今、俺の心に残ったのは何だと言うのだろう。
……それは、きっと、何か荒んだものだと思っていた。
しかし、違う。
全てが終わった今、俺の心に残ったのはただひとつだけ。
殺意、情欲、それらを全て超えたひとりの女への想いだけだった。
ひとつの戦いの後、俺はもう二度と目を覚まさぬこの女を腕に抱いていた。


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