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THE UNARMED
【悲恋 恋愛小説】

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THE UNARMED-12

俺が陣屋を出てから丸一日が経った。
その間、ふらり外に出てみては酒場の中へ戻ったりして、ベルハイムの酒場に入り浸っていた。
金も底を突き、俺はそろそろ何処へ行こうかと考えを巡らせていた。

既に闇の帳は下りている。
月が辺りを照らしていた。街灯も相まってそれなりに明るいが、やはり夜の街は不気味だ。
梟の鳴く声が遠くに響いている。
俺はそんな中、街の裏路地、レンガ造りの壁に背を凭れていた。
胃の腑につまみすらも入れずにかなり飲んだようで、歩くのが酷くだるかった。
「……?」
コツコツコツ――乾いたブーツの音だった。それに微かに混じる金属の音。
俺はその音の方を見やり、そして現れたその人物に少なからず驚いた。
「……皆がお前の姿を見ていないと言っていたから探しに来た」
レイチェル・ギルガだった。
あれほど辛辣に俺を追いやったくせに、今更何しに来やがった。
余計なお世話だ、くそったれ。
俺は奴から顔を背ける。
ふらつく身体を壁に預け、素っ気なく言う。
「帰れよ」
しかしレイチェルはそうもいかないと言う。
「この前のことなら謝る。本当に誤解だったらしいな。あの人を守るために、随分働いてくれたそうじゃないか」
俺はその言葉に疑問符を浮かべたが、すぐにサバーカの入れ知恵だと気付いた。
「何故、あんな嘘をついた? 私を怒らせて、楽しいのか?」
俺はその問いには答えず、黙っていた。
すると呆れたような溜息をつき、レイチェルは俺の腕をぐいと掴む。
「まあ、いい。皆も心配しているから、私と一緒に帰ってくれ」
そうか。あいつ等も心配している、か。
そう言われ、渋々と俺は壁から離れる。
ぐらりと一瞬よろめくが、身体は地面に倒れず細い二本の腕に支えられた。

「何をやっているんだ。ほら、肩を貸してやるから掴まれ」
呆れたようなレイチェルの声も遠い。相当に飲み過ぎたようだ。
「肩なんかいらねえよ」
俺がレイチェルの手を払いのけると、奴は少し憤慨したような様子で言った。
「馬鹿を言え、それで無事に帰れると思っているのか」
有無を言わさず俺の腕を掴み、自らも傷を負っている筈なのに己の肩に回す。行くぞ、とこれも有無を言わさずに歩き始めた。
その顔が顰められているのは、やはり肩に痛みがあるからだろう。
くそったれ、お節介やきめ。
俺より自分のことを大事にしたらどうなんだ。
暫し俺達は無言で歩いていたが、歩きながらぽつりとレイチェルが言った。
「……悪かった。お前が悪いわけではないのに」

「どうしようもなかったんだ。今回のことは、どうしても誰かのせいにしないとやり切れなくて……すまない、ガルム」
「償いはするよ、何でも言ってみろ。不愉快にさせたせめてもの詫び……」
言葉が途中で途切れたのは、その唇が塞がれたからだった。
驚きと困惑の交じった表情を浮かべるレイチェルの唇に、俺は自分のそれを重ねていた。
「何でも?」
俺はその細い手首を掴んで、レイチェルを壁に追いやる。
「なら、抱かせろよ」
俺の言葉に、レイチェルの表情が強張った。
俺は返事を待たずに再び奴の唇を奪う。左手で奴の手首を掴み壁に押し付け、右手で金の髪を掻き揚げながら、ただただ貪るようにキスをする。
壁に押し付けられた拍子に、奴の右肩に巻かれた包帯が微かに赤く滲んだ。
レイチェルが苦しげに呻き、俺は唇を離す。
「……抱かせろよ。死んだ奴を思ったって、もう無駄だろ?俺が……」
そして再びキスをする。
「俺があいつのことなんか、忘れさせてやる」


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