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Sweet Fragrance
【青春 恋愛小説】

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Sweet Fragrance3-2

「うん…だから永井達也くんにコクってみたの。B組の。知ってる?」
え……
「うん…」
「だから、彼と付き合ってみる。悠斗くんを振っちゃってごめんね。だけどいろんな人と付き合ってみようと思うの。そしたらいつか本当に愛せる人が現われるかもしれないでしょ?」
ゆかりちゃんって本当に愛せる人がいないでしょう、とあたしが何かの拍子に言ったのは、一週間ほど前だった。どうしようもないほど好きな人みつけて、恋してみたら、と言いたかったのだが、とても彼女らしく受けとめてくれたようだ。…だなんて、冷静に考えるようになったのは2月3月が過ぎ、高2になった先月のことだ。何がつらかったって、それはカップルの噂だ。ゆかりちゃんはのろけたりしない子だから、彼女から話を聞くことはなかったけど、なにしろ校内で一番話題の、美男美女カップル。達也を好きな女子も、ゆかりちゃんを好きな男子もは大勢いるのだから。ふたりがペアリング買ってた、とか、達也くんがゆかりちゃんの家に行ったみたいよとか。あたしには女の子たちが、「あのふたりどこまでいったの?ゆかりちゃんから何も聞いてない?」としつこく問われたりした。そりゃまああの子は秘密主義だし、あたしだって聞きたくない!それどころか「亜希って永井くん好きじゃなかったけ?」なんていう、敏感なのか鈍感なのかわかんない言葉も聞いた。あたしは一
時期ゆかりちゃんを避けてしまったりしたから、あのふたりは大喧嘩をした、なんて吹聴する女もいたらしい。ゆかりちゃんがそのへんのことにかなり疎く、何も知らないのがせめてもの救い。けれどあの子の無邪気な笑顔はあたしを苦しませた。あのころは…本当に本当につらかった。

やっと心が落ち着いたのは高2の4月。先月だ。4月からもゆかりちゃんと一緒のクラス。それは抵抗があったけど、噂も冷めたころなのであたしは比較的おちついて彼女と一緒にいれた。そうして迎えた今月、5月のはじめ。ゆかりちゃんは永井達也と別れた。

あたしはたぶん嬉しかった。というより何も感じなかったと言える。けれどやっぱり好きだし、永井が別れたことでまた多くの女が狙い始めたのにつられて、またアプローチを開始した。けど、さすがゆかりちゃん、永井達也はゆかりちゃんを忘れられないらしかった。
そんな矢先、永井達也は中西まどかと付き合うらしいという噂が流れた。中西まどか。去年同じクラスだった。クラスでもめだたない、おとなしい。かわいくない。メイクもしていない。ただ香水がキツイ。あたしや、大半の女子の評価はこんなもの。だけどまぁ、あのおとなしくて従順そうなところがいいのか、彼女のファンである男子も多いらしい。とはいっても…とあたしは思う。あの永井達也が…?ゆかりちゃんみたいなアイドルを大好きだった彼が、あんなに地味な女を選ぶだろうか?ゆかりちゃんとの昨日の会話を思い出す。
中西まどかと永井達也のことについてあたしが話すと、彼女は興味なさそうに、中西さんってどんな子、と聞いた。去年同じクラスだったじゃない、と突っ込みながらもあたしは答えた。「全然可愛くない子。なんかね、香水がキツイのよ、いつも」
「ふーん。でも達也が付き合うんだからイイトコあるんでしょ。達也いま、毎日コクられてるだろうから、いっぱい選択肢あるはずだもん。」
「だから、なんでわざわざあんなにモテる達也くんが中西さん選んだのかがわかんない。」
「だからイイトコあるんでしょ。」
ゆかりちゃんはこともなげにくりかえす。
「ゆかりちゃんは達也くんに興味ないからそういえるのよ、あたしひそかに狙ってたんだからぁ。」
ここであたしは、はじめて永井を好きなことをゆかりちゃんに言った。
「そうなのー、知らなかった」
中西さんにやられちゃった、というあたしに、ゆかりちゃんは不思議そうな表情を向けていた。どうしてさっさとコクらないのよ、というような。


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