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亜紀
【その他 官能小説】

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亜紀-27

 「しかしなあ。それじゃ婚約するかも知れないというくらいにしておくか」
 「そうね、それでいいわ」
 「で、具体的にどうする?」
 「どうしたらいい?」
 「君は明日大家さんの所に行って部屋を解約して来い。突然だから違約金を取られるだろうが、それはその25万から払えばいい。そしてなるべく早く荷物をまとめて実家に帰れ。念のため住民票はそのまま今の所にしておけ。それから大家さんにはピアノの練習の為に外国に留学することになったとでも言っておけ。学校に来た外人の目に留まって突然話が決まったとでも言えばいい」
 「小野田さん頭が働くのね。でも私住民票は名古屋に置いたままなのよ」
 「それはいい。もっけの幸いだった」
 「それで小野田さんはどうするの?」
 「僕も突然バタバタすると怪しまれるから今までどおり教団に行って君からの連絡を待つ。筋書きどおりに話が進んでいるから名古屋に来ても大丈夫と君から連絡があれば直ぐに行く。しかし時間は無いぞ。来週の土曜日が君が参加することになっている体験修行の日だから、すべてはそれ以前にやらなくてはいけない」
 「大丈夫、今週中には来て貰えるようにしておくから」
 「まあ余り両親を驚かさないように、話はなるべくぼかしておけよ」
 「心得てます」
 「もうおふざけは無しだぞ」
 「おふざけは無しです」
 「よし。それなら帰って早く寝ろ。いろいろ準備があって明日から忙しくなるぞ」
 「はいボス、それでは帰ります」
 「君は、おふざけとは手を切ることが出来ないようだな」
 「はいはい。それじゃ毎日電話で連絡取り合いましょう」

 どうも怪しげな教団に長くい過ぎたようだ。妻が事故で死んだ時の補償金は手つかずのまま証券会社に預けてあるので明日は教団を抜け出して解約し、銀行に預け直しておこう。家は建て直したいので明け渡して欲しいと仄めかされたことがあるから、出ると言う分には問題無いだろう。電気やガスの精算金くらい大家が持つと言ってくれるかも知れない。新聞は電話すればすぐに精算にやってくるし、後は役所関係の手続きだ。しかしこれは住民票から後を追われるといけないので、移す訳には行かない。だからそのまま放っておくということで、やることはなくなる。
 管長補佐は管長と一緒に毎日1回は大体顔を出すのだが、健介に対する態度が微妙に変わった。相変わらず人前でベタベタするが、人に見られないように健介の性器をズボンの上から握ったりするようになった。あの日の出来事を思い出させようというのかも知れない。あるいは健介の命運を握っているぞと仄めかしているのだろうか。
 健介が滝に行った翌々日亜紀は実家に引き上げ、その翌日の土曜日の夜には健介の家に電話してきた。体験修行までまだ1週間を残している。

 「すべて計画どおり順調に進んでいますから、明日にでも来て下さい」
 と言う。流石に実家に帰ると言葉遣いも改まるんだなと思って感心していたら
 「部下一同ボスのお越しをお待ちしております」
 と続ける。
 「君のおふざけはどうも治らんな。ひょっとして自転車置き場で泣いていたのもふざけていたんでは無いんだろうな」
 「失礼ね。ふざけてあんなに涙は出ません」
 「それじゃ明日新幹線に乗る時に電話する」
 「そしたら時間を見計らって駅まで迎えに行くわ」
 「うん、そうしてくれると助かるな」


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