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悠子
【その他 官能小説】

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悠子-10

 「一旦マスターの家まで行って戻ったんじゃないの?」
 「いいや。駅から僕の家まで歩いたら1時間もかかるんだよ。道も知らない筈だし。そこから又戻って会社まで歩いたら1時間半以上かかってしまう」
 「そう。まあそれはいいけど、それからどうしたの?」
 「例によって手振りとか絵に描いたりとかいろいろ苦労して話を聞くと僕の友達にレイプされそうになって抵抗して逃げ帰ってきたと言うんだな。なるほど、友達にいくら電話しても出ないしおかしいとは思っていたんだ」
 「それで独りで帰ってきたという訳なのね。でも娼婦なんでしょ? レイプなんかしなくてもお金払えばやらせるんじゃないの?」
 「そうなんだ。金なんか払わなくても彼には就職の世話をして貰っていたんだし、彼女にも金は1万円渡したけど多分彼に食べさせて貰っていたんじゃないかと思うよ。彼にもいろいろ世話になるからと言って僕は2万円彼に渡したんだから。だから2人は当然セックスしてると思っていたし、レイプなんて騒ぎになるのがおかしいんだな。でも、ホテルの中で襲われて殴られたって言うんだ。それに彼女が独りで戻ってきたっていうのに彼から僕に連絡が無いというのはおかしいだろう? やっぱり彼女の言うとおりレイプでもしようとしたのかなって考えてしまう」
 「乱暴な人なの?」
 「それが全然違う。スカウトマンなんて言うと口の上手い身軽な男みたいに思うだろうけど、そうじゃないんだ。スカウトマンの経験があって今でも頼まれれば紹介はするっていうから頼んだんだけど、そんな男じゃないんだよ。無口でいつも静かに本を読んでいるような男なんだ」
 「そういう方が却って女に乱暴したりするんじゃないかしら」
 「そうかな。今でも信じられないんだ。そいつとはそれっきり付き合いが無くなってしまって彼の方の言い分を聞く機会はなくなってしまったんだけど」
 「それでどうしたの?」
 「彼女のこと?」
 「ええ」
 「えっと、話すと長い話しになるんだよ」
 「いいですよ。夜は長いから」
 「困ったな」
 「何か話したく無いようなことがあったんですか?」
 「いや、別にそんなことは無い。その月の月末で辞めるという社員がいてね、彼女が戻ってきたという日がその社員の為に送別会を皆でやることになっていた日なんだ。皆と言っても社長は入れないで同僚社員だけでという意味だけど」
 「それで?」
 「それで、会社は額縁の製造販売をする会社でね。長いアルミの棒を仕入れてそれをカットして組み立てて、いろんな部品と合わせて完成品にして箱詰めして出荷するという会社なんだよ。あのー、本当にこんな話聞きたいの?」
 「ええ、何だかどんな展開になっていくのかますます面白くなってきた。それで送別会がどうなったの?」
 「うーん。そういう会社だから埼玉県の会社でも組立製造はやっていたけど人件費の安い田舎で、田舎って郡山なんだけど、そこにも工場があって地元のおばちゃん達を沢山パートに雇って組み立て製造していたんだ。だから埼玉でもパートのおばちゃんは沢山いたけど、正式の社員なんて5〜6人しかいないんだ。だからこそ社員が辞めるっていうんで送別会をやろうということになったんでね。それでその日は郡山の工場からも工場長が送別会に出る為に来ていたんだ。郡山の工場には社員なんてその工場長1人しかいないんだよ。で、送別会っていうのが、僕が同棲を始めたばかりの女房の働いている店でやることになっていてね、当時はまだ結婚していないから女房では無いんだけど」
 「へーえ。ますます面白くなってきた。それでどうしたの?」
 「それで普通なら彼女を僕の家に連れていって『大人しく待ってろ、話は帰ってからゆっくりする』っていうことになるんだろうけど、その時にはもう女房と同棲始めちゃってたんだ。女房の荷物も沢山あるし、そんな所にタイ人を連れて帰って独りで置いとく訳に行かないだろう? 弱り切っていたら郡山から来た工場長が郡山へ連れ帰って使ってやると言ってくれたんだ。寮もあるし布団もあるからと言ってくれて」
 「パートのおばさん達の為の寮なんかあったの?」
 「いや、パートのおばさんは近所から来るんだから寮は関係ないんだ。中国残留孤児って聞いたことあるだろう? 戦争の時中国にいた日本人が赤ん坊を中国に置き去りにして日本に逃げ帰ってきて、中国人に拾われて育ったっていう人達だな」
 「ええ、それがどうしたの?」
 「会社はそういう人達の子供を沢山雇って働かせていたんだよ。それはまあ、パートでも無いし社員ともちょっと扱いが違ったから準社員だな。そういう人達を雇い入れるとどこかのお役所から補助金が出るらしいんだ。給料は安くていいし、補助金は出るしで、会社にとっては美味い話なんだよ。それでその連中の為に寮があったんだ」
 「ああ、なるほどね」


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