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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-15

「――でも、いいのかな。こういう所って病院食以外は食べちゃいけないんだろ」

「平気ですよ。そりゃ制限はされてるけど私の場合、定期的に甘いもの摂らないと死んじゃうんです」

遥は美味しそうにケーキを頬張りながら言った。

「勝手なこと言ってるなぁ・・・・・」

「それ、もう一つ貰っていいですか?」

箱からだした二つめのケーキを、遥はもの欲しそうな目で見ている。
信が一緒に食べようと思って買ってきた分だった。

「・・・しようがねぇ、やるよ」

「やった!」


窓から差し込むオレンジ色の光がシーツに影を残している。淡い陽光が白くなった遥の肌を照らし、微かに映えていた。
外はうなるほどの風が吹いているのに、密閉された部屋のなかは静かで穏やかな空気だけが流れていた。

遥が目を覚まして以来、学校が終わってからというものの、毎日のようにここへ通っている。
彼女が寝たきりの状態だから信にも色々手伝えることがあって、遥の両親ともずいぶん親しくなった。
とりわけ遥とはなるべく時間をかけて過ごすように心がけた。遥のしてやりたいこと、望むこと、なんでも。それが少しでも、自分の犯してきた過ちを拭い去ってくれるのなら・・・・


そう、これは償いだった。

「ところで、見せたいものってなんだ?」

信が聞くと遥は二つ目のケーキをたいらげたところだった。

「・・・その前に、一つ聞いていい?」

外に目を向けたまま、遥は寂しそうに言った。

「この病気が治ったら、また、泳げるかな」

「ああ」

「ホントに?私、まだ水泳部にいられると思う・・・?」

「当たり前だろ。戻ってもらわなきゃ困るよ」

と信は苦笑した。すると少し安心したような顔になって、遥も笑った。
そうやって、二人で笑い合いながら、そんな日が来ることを、ひたすら祈りながら。
信じていたはずだった、その時までは。

「驚かないでね」

と遥は言って、おもむろにシーツをめくった。
白い薄生地と同じような彼女の肌がそこにあった。頬は痩けて、青白くなった顔は目だけに力を残して信を見ている。触れればすぐに崩れてしまいそうな、そんな危なっかしい印象が不安をさらに煽った。
首、胸、腕・・・・・・

そして、
右足の、太ももから先が




なかった。


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