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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-14

信は病院を出ると歩きだした。電車にもバスにも乗らずに流れてくいくつもの景色を思い出すように数えた。毎朝通った上り坂、その先にある高校、駅前のファミレス、バーガーショップ、・・・・・市営プール。
どこを通っても、四人で一緒に行ったところばかりだった。

人通りの少ない交差点の前にくると向こう側の歩道にいる一団に声をかけられた。水泳部の連中だった。
信号が青になってタケルがこっちに走ってくる。

「なんだ、信。こんな所に。今からみんなで病院に―――」

「・・・・・・タケル」

「信?」

「タケル、・・・・俺・・・ばかだ」

一筋の涙が、頬を伝ってながれた。そこで初めて自分が今までなんて都合よくこれからを考えていたか、気付いた。
分かってなかった。
なんも分かってなかった。
――でも、自分が一番悪いんだってことだけは、わかったんだ・・・・・・。

それから信は、道路の真ん中に座って泣きはじめた。子供みたいに、腰を折ってしゃくりあげた。そばを通っていった歩行者が怪訝な顔で、こちらを見ている。

信号が赤に変わっても、とまることはなかった。





今日はとても風が強い。

遥が倒れた日から、五日ほど続いた汗が吹き出るような暑さも、ここ最近は引いているみたいだ。

「みせたいものがある」

と遥が言ったのはそんな五月晴れの気持ちいい日曜だった。部活が終わってから呼び出されたとおりに病院に向かう頃には、日も落ちはじめていて、信は急いでバスに飛び乗ると一番後ろの席に座った。

二つ目の停車駅で下りるのももう慣れた。

病室のドアを何回かノックしてから入る。遥はいつもと同じ窓際のベッドに横になっていた。

「おす、元気か」

信が声をかけると遥はうれしそうな顔をして振り向いた。

「病人に向かって元気か、はないでしょ」

「言い返す元気があれば大丈夫だな。ほれ、ご注文のケーキだ」

とチラッと後ろのドアを振り返ると、鞄のなかから小さなケーキの箱をだした。

「わぁ、ホントに持ってきてくれたんだ!ありがとう」

遥は起き上がるとさっきの倍はうれしそうな顔をした。買ってきた紙皿にケーキをのせ、フォークを付けて渡すと、目を見張るほどのスピードで食べはじめた。


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