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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第3章 そのチョコを食べ終わる頃には』-15

「今も関係は続いているのかな?」
「いえ……もう、解消しました」
 校長はうつむいたままの私を再びソファに座らせふう、とため息をついた。
「そうか。それは何より。そのメモで彼と約束したんだろうが、そう思うように簡単にはいかなかっただろう?」
 私はアリバイが突き崩された罪人のように青ざめて、観念したように小さく頷いた。
「何度も会って、何度もそういう行為を続けていれば、お互い離れ難くなるものだ。こんな私でも若い頃、同僚の女性と危うくそういう状況に陥ろうとしたことがある」
 私は顔を上げた。
「たぶん、見えていないだけで、結構多くの者がそういう秘密の関係になっているのかも知れないね。たとえ教員であっても」校長は切なそうに笑った。「発覚しないように努力し、最終的にきちんと関係を精算した君たちの常識的な行動は評価に値する。だから退職する私だけがこの事実を心に秘めたまま去る。そしていずれ忘れる。それでいいね?」
「はい……」
「不祥事をおおっぴらにしたくない、という気持ちは正直ある。このまま知らないで済むことなら、その方が良かった。しかしこの事実を知ってしまった以上、来年度も君と沖田先生を一緒の学年担当にするのはさすがにまずいと思ったんだ」
「そうですね……無理もありません」
「まあ、君たちが出した答えだから、今さら第三者があれこれ口を挟むことはお節介なことだが、君たち自身、そして二人のご家族にとってもここですっぱり切った方がいいと私も思う」
 私はうつむいていた。
 校長は申し訳なさそうに言った。
「私のやったことは間違いだったかな」
「いえ」私は目を上げた。「ありがとうございます。校長先生のお陰で私も彼も目を覚ますことができたと思っています」
 校長は小さく頷いた。
「沖田先生が教頭試験に合格していたことは幸いだった。今の二年生を持ち上がれないのは無念だろうが……」
「私が全部悪いんです。あの人を縛りつけてしまっていた私が……」
「お互い様だよ。君がそう思い詰める必要はない」
 貸しなさい、と言って、メモを私の手から取り戻した校長は、立ち上がり、部屋の隅に置かれていたシュレッダーにその紙を送り込んだ。耳障りなモーター音がして、私と沖田の二ヶ月半に亘る道を外れた行いの証拠は消えた。
 私は立ち上がり、肩を落として小さな声で言った。「ご迷惑をお掛けしました」
「ご家族を大切にして下さい」
「はい。ありがとうございます。本当に申し訳ありませんでした」
 私は深々と頭を下げた後校長室を出て、ドアを閉め、背筋を伸ばした。そして長いため息をつくと職員室への階段を上った。


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