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美雪
【学園物 官能小説】

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美雪-21

 「ところでオルゴールはいつ買ってくれるのよ」
 「オルゴール? 何だそれは」
 「オルゴール付きの目覚ましをお兄ちゃんが壊したじゃない」
 「あれは俺が壊したんじゃない。寿命で壊れたんだって言っただろ」
 「オルゴールくらい買ってやるって言ったじゃない」
 「そんなこと言ったか?」
 「言ったよ」
 「もう忘れた」
 「だから思い出したでしょ?」
 「オルゴールくらい柳田に買って貰え」
 「どうして?」
 「折角男と付き合ってるんだから、それくらいの機転をきかすもんだ」
 「それじゃお兄ちゃんに言われたからって柳田さんにねだってみよう」
 「俺に言われたなんて言わないでいいんだ」
 「本当にケチなんだから」
 「ケチなんじゃない。金が無いから買えないだけだ」
 「そういうのをケチって言うんじゃない」
 「ケチっていうのは金があるのに買ってやらないのをケチと言うんだ」
 「どっちにしたって買ってくれないということに変わりないんだから同じじゃない」
 「同じじゃない。俺だって辛いんだ。可愛い妹にオルゴールの一つも買ってやれないだなんて悲しい」
 「本当? 本当にそう思ってるの?」
 「ああ。だから母さんに俺の小遣い増やすようにお前から言ってみてくれ」
 「何だ。そういう魂胆だったのか」
 「魂胆とは何だ。正直な気持ちを言っただけだ」
 「私を煽てても駄目よ」
 「残念だな。可愛い妹にオルゴールを買ってやれなくて」
 「お小遣い増えても私のオルゴール買うなんてことはあり得ないから駄目。お兄ちゃんのお小遣いは増やさない方がいいってお母さんに言っておこう」
 「余計なことは言うな」
 「お兄ちゃんがオルゴール壊したからだよ」
 「お前もしつこいな。あれは寿命で壊れたんだと何度言えば分かるんだ」
 「まあいいわ。お兄ちゃんに直して貰おうなんて考えた私が馬鹿だったんだわ」
 「何を言うか。俺が一生懸命直そうとしてる時に目覚まし買いに行ってた癖に」
 「一生懸命壊してたんじゃない」
 「馬鹿なことを言うな」
 「ねえ、今度ダブルデートしない?」
 「何?」
 「お兄ちゃんはあのピンクのセーターの人と一緒で、私は柳田さんと一緒に」
 「何考えてんだ、お前は」
 「4人一緒なら楽しいと思って」
 「阿呆臭い。何を好んで俺がお前とデートしなきゃならないんだ」
 「私とデートする訳じゃないよ。ただ4人一緒に逢おうって言ってるだけ」
 「お前がそばにいるってだけでうっとおしいんだ。そんなんでデートなんか出来るか、馬鹿」
 「まあ酷い」
 「お前と柳田は遊園地でも行ってればいいんだ」
 「お兄ちゃん達は何処へ行くの?」
 「何処でもいい。お前達のいない所に行くんだ」
 「意地悪なお兄ちゃん」
 「お前が可愛くないから意地悪になるんだ」
 「さっき可愛い妹にオルゴールくらい買ってやりたいって言ったじゃないの」
 「あれは言葉の綾だ」
 「ふん」
 「さあ、もう本当に出てけ。俺は忙しいんだ」
 「へいへい」
 「そういう返事をするから屁が出るんだ」
 「ブッ」
 「するなって言ってるのが分からないのか」
 「今のは口だよ。それくらい分からないの?」
 「お前の息はオナラと同じくらい臭いんだ」
 「あー、もう許せない」
 部屋から出かかっていた美雪は戻ってきて机に向かっていた哲治に後ろから覆い被さり、両腕で首を絞めた。女の力だし本気でやっている訳ではないから、哲治には何ともないことで苦しくもなかった。しかし美雪の女らしい柔らかい体が哲治の背中に密着していて、首を絞めるというよりも抱きついているような感じである。
 「何やってんだ、お前は」
 「首を絞めてるの」
 「抱きついてるだけじゃないか」
 「人の首なんか絞めたことないからうまくいかない」
 「いつまでもじゃれてないで早く勉強させてくれ」
 「はいはい」
 「おい」
 「何?」
 「柳田とホテルなんか行くんじゃないぞ」
 「そんなの言われるまでもないよ」
 「何を言うか。行くことになりそうだって言ってた癖に」
 「一時の気の迷い」
 「高校卒業してから迷え」
 「はーい、はい」


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