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愉楽
【SM 官能小説】

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愉楽-10

夫の嫉妬にまみれた色濃い視線が、わたくしの太腿の内側を淫らに這い上がり、繊毛のあいだ
に縫うように忍び込みながらも、夫の手先は、膝頭からふくらはぎを撫で、縄で縛られた足首
をなぞりながら、足指をいじり始めたのです。足指のあいだを自らの指先でねばっこく卑猥に
ほぐしながら、言いました。

若い男を欲しがる女の体の変化に、わしが、気がつかないとでも思っているのか。ナオミは、
わしといるときよりも、とてもきれいになったではないか。その皮肉めいた言葉に頬を微かに
赤らめたわたくしは、夫の視線を避けるように顔を横に向けました。
夫はわたくしが足指をいじられるほどに、あそこが湿り気を帯びてくるのを知っていました。
足指のひとつひとつが主人の手の中で、喘ぎ、よじり、悶えながらのけ反るほどに、わたくし
の中は昂ぶり、蜜が潤みました。

夫はわたくしの身体の火照りを感じとったのか、指をわたくしの陰部に卑猥な挿入を始めまし
た。肉がこすれる厭らしい陰部の音とともに、蜜のすえた匂いを籠らせ、肉襞を掻き、爪を甘
く立てました。そして、指を根元まで奥深く咥えさせ、襞をえぐるような、ささくれた骨の関
節だけが擦れるような抜き差しは、わたくしにいつもとは違った冷ややかな痺れを感じさせま
した。

身をよじるほどに、ベッドに縛り付けられた足爪の先がのけ反り、蠢く膣孔は、わたくしの
意思に反して主人の指を底知れぬ深い空洞の暗闇へとみちびき、やがて、夫の指の節が襞肉の
中で茫々と霞んでくると、わたくしの咽喉の奥が、痺楽とも言える気だるいものに侵されたよ
うな喘ぎ声をひとりでに洩らしはじめました。
粘膜が溶け出し、襞は主人の指に吸いつき、小刻みに痙攣し、収縮をはじめると、わたくしは
恥ずかしげもなく、どこからともなく滲み出してくる蜜液を泡立たせ、滴らせ、淫襞を妖しく
うねらせ、潤みに充たされた深い肉の悦びに浸っていったのです。

主人の指は、一本から二本になり、わたくしの中を淫らに抜き差し、弄り、掻き回しました。
それは、ペニスが柔らかさと堅さを交互に含みながら肥大化し、肉襞を少しずつ裂いていくよ
うな気がいたしました。

わたくしは主人の顔から眼を背けるように瞳を閉じました。わたくしが含んでいるものは、
すでに主人の指ではなく、タクヤさんのものへと変幻し、わたくしのきわめて淫乱な幻覚とし
て欲情を高みに導こうとさえしているようでした。わたくしは烈しく身悶えを繰り返し、主人
の指が、いや、タクヤさんのものが媚肉を啄むように擦りあげると、溢れるような蜜液が渦を
巻き、さらに潤みを増していくのでした。

溶けるような蜜汁が、膣の中で泡立ち、襞肉は掻き毟られるように爛れ始め、指と淫猥に擦れ
合う音さえ卑猥な木霊のように聞こえてくるのでした。それはタクヤさんの肉体と交わってい
るというわたくしの、わたくし自身が知らなかった、これまで鬱積した幻覚のような淫欲に
ほかならないのだと思われたのでございます。



タクヤさんは、一か月ほどわたくしたちの家に滞在したあと、東京に帰っていきました。
思えば、ひとときのかなわぬ淡い想いであったような気がします。歳のいった夫であっても、
曲がりなりにもわたくしは人妻であり、タクヤさんは主人の甥なのです。けっしてゆるされる
想いではないことは重々承知しておりましたが、タクヤさんがいなくなってからというもの、
わたくしは切なくなるような彼の性夢を見るようになりました。



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