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Overtake goodbye
【姉弟相姦 官能小説】

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B-10

 「冷静さを欠いて、どんな勘違いをしようが俺の知った事じゃない。後で恥をかくのは君だからな。
 ついでに訂正させてもらうが、その女というのは俺の姉で、年齢は君と一歳しか違わない。年増はずいぶんと失礼だ。」
 「嘘おっしゃい!あなたのお姉さんなら私も知ってるけど、あんな感じじゃなかったわ。」

 やれやれ、本当に意固地さは吉川と双璧だ。
 このように、自分の非を意地でも認めない女には、事実を突き付け、追い込んでやりたくなる。

 「だったら、俺のアパートに来て確かめて見ればいい。姉は、今日からしばらく滞在する予定だから、何時でも会えるから。」

 俺の返答に、長岡は黙ってしまった。

 「──こんな下らない質問の為に電話してきたのか?今朝の社内メールといい、自分のやってる事を冷静に考えて……。」

 畳み掛けるような俺の文句に堪え切れなかったのか、長岡は、通話を途中で切ってしまった。

 「なんだい。自分から掛けて来たくせに。」

 せっかくの気分を台無しにされて憤慨気味だが、少し不可解な部分もあった。

 (彼女が、こんなに幼稚な思考の持ち主とは、思わなかったな……。)

 確かに、子供の頃から負けず嫌いで意固地な部分はあったが、他人を羨むあまり、妬み、僻みを見せるなんて事はなかった。
 それが、たった一度、酔って関係を持ったからといって、相手の言い分に聞く耳を持たず、自分の偏った考えのみ正しいみたいな言動を取るとは、まるで、初めて恋愛した高校生並みのメンタリティではないか。
 美しい容姿は別にしても、今年で二十八歳になる大人の女が、全く恋愛遍歴が無いなんて、ちょっと考えられない。

 「──まあ、いいや。それより、亜紀に連絡しなくちゃ。」

 取り敢えず、長岡は放っておく事にしよう。彼女も吉川と同様に当事者となって冷静さを欠き、視野狭窄に陥っているだけで、自分の非に気づくまではこちらが何を言っても無駄だろう。
 彼女が気づくまで、時間的猶予が必要だ。

 (さて、どうかな……。)

 三回目のコール音の後、亜紀は出た。

 「ああ、姉さん。今から帰るから。」
 「お疲れさま。やけに遅いのね。何時も、こんな時間?」
 「ちょっと、今日は遅かったかな。三十分で帰るから。」

 亜紀の「判ったわ。ご飯温めておくから。」という声を残し、通話は切れた。

 「さて、帰るとするか。」

 他愛ない日常的な会話なのに、俺の顔は自然と緩んでいる──。自分が、ソシオパスだから結婚なんか無理だと悲観的な考えをした俺が、アパートで待つ存在があることに喜びを感じているのは、自分の家族を欲している証なのだろうか?

 (よく、判らんな……。)

 車に乗り込んでエンジンを掛けると、再び、スマホが震え出し、画面が輝いた。
 画面に、長岡莉穂の文字が映し出される。俺は無視を決め込み、車を発進させた。

 (一日くらい間をおいた方が、お互いの為だ。)

 その後も、二度、三度と掛かって来ていたみたいだが、アパート到着間近になる頃には、スマホは静かになっていた。


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