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One lives
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one lives two case-8

『騙されるなよ。また裏切る。人間はいつだってそうだ』
俺は頭痛に顔をしかめ、肩ひざをつく。
「大丈夫?」真奈美が言う。黒髪が揺れる。
「考えるのよ」看護婦は言う。「そして答えを出すの」
――― 誰が必要なのか?
『おいおい、あの女より俺のほうが付き合いが長い。俺は決してお前を裏切らないぜ』
俺に似た誰かが叫ぶ。
誰かに似た俺は、願った。
「一緒にいて、くれるか。真奈美」
「うん」真奈美はついに堪えきれず涙をこぼした。
そして彼女は僕の手をとる。
迎えたのは、二人の未来。例え幸福へジャンプできなくても、君と一緒なら乗り越えていける気がする。
否定したのは、孤独。
かつて自身を支配したもの。
『それで、いいのか?』
彼は心配そうに俺を覗き込む。
『絶対に、その選択は間違っている。ひとは結局どこまでもひとりだよ』
あぁ、そうだろう。悔しいけれど、きっとそれは正しい。俺は知っている。
お前の言う通り、これは間違った選択なのだろう。
真の孤独は他人には救えない。
だからお前にしか、俺は救えない。
何度も自問し、何度も自答したその答えは揺らぐことなく。
だけど。
この手に伝わる温もり、その強さ。
だけど、お前を認め、孤独を愛するより
孤独を認め、お前を否定することを俺は選ぼう。
「真奈美、看護婦さん、ちょっと先に下に降りていてもらえますか?」
看護婦は怪訝な表情を見せる。
「大丈夫ですよ。ただ、きっちりと向かい合わなきゃいけない相手がいるので」
そう言うと、彼女は理解したように真奈美を連れて階段を下りる。真奈美が一段飛ばしに下りているのだろう、『危ないわよ』と注意する声が聞こえた。
俺は、視線を見慣れた街並みに戻す。
太陽が頭半分、自己主張を始め、ひとつ背伸びをする様に街は動き出している。
太陽は鏡。
自分自身を映し出す湖面のように彼を誘う。
『もう一度問おう』
その声は、先ほどよりも強く、心に響いた。
『喩え再度お前が孤独に苛まれようと、俺はお前を助けない』
――― それでも俺を否定するのか?
答えず、陽光を直視する。
「眩しいな」手をかざし、目を細める。
「確かに、俺は未来に希望を見出せない。でも、きっとそれでいいのさ。明日を向けないのなら、今を生きるんだ。この一瞬、一瞬が未来に繋がっていくのだろうよ。踏みしめていくよ、幸も不幸も、孤独も全部。俺のなかの闇は、いつまでも消えないだろうけれど、もうお前は必要ない」
孤独は認めるけれど、愛さない。
それが俺の答えだ。
『・・・強くなったな』
「かもな」
『またいつか会おう』
「・・・どうだかな」
鏡に亀裂が走るように、彼はズレて消えた。
俺は地平線を見遣る。
きっと果ては無い。
望まずとも延々と明日はやってくる。
誰のもとにも平等に、明日はやってくる。
未来に怯えずに俺は生きていこう。
道路標識は闇に隠れ、まだ見えない。
だけど前に進む。
手探りで、ゆっくりと、生きていけばいい。


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