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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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時を越えたカミングアウト-4

「私も都会で生活したことあるけど、ここのオープンさ加減は、間違いなく異常よ。異常。下ネタを話すにしても、ここまでになると、さすがにひかれちゃうわよ。それくらい異常。ま、私もその一人には違いないんだけど」
 奈々子は、はっきり言った。
「でもね、それはそれで地域の特徴でもあると思うの。これが、もっと陰に籠ってしまうと、それこそ因習とかカルトって言うか、ネガティブな方向へ進んじゃうんだよね。ともすると、云われなきレッテルとか貼られて、ゴシップ誌なんかで危ない街として紹介なんかされたりして。その辺は、久美の範疇ね」
 頭が良いだけではなく、知識も豊富で、客観的なスタンスで物事を見る奈々子らしい考え方だ。
「確かに。久美にとって民俗学が言わばライフワークみたいになってるってことは、みんな知ってると思うけど、それに影響されて、最近は俺もそっちにハマりだしてきたんだ」
 町役場に勤める悟は、一昨年まで学校教育課の民俗資料館に籍を置いていた。
 資料館で働いていた時は、あくまでも仕事と割り切っていたが、その職を離れてから、民俗学に興味が出てきた。妻の久美がその道をライフワークにしているだけに、生活環境が無理なく踏み入れることを後押ししてくれた。
「民俗学的な見地からすると、その地域の存在する独特な風習は、一般的に外部に伝播しない。そのコミュニティの中だけで完結してしまう。外部から一切影響を受けないし、外部に漏れることも無い。当該コミュニティの中だけで語り継がれていく。つまりガラパゴス的とも言える口伝を辿るわけだ」
 悟は、いっぱしの民俗学者気取りで、自分の街を語りだした。
「そうなの?でも知識も経験も久美には程遠いわね」
 奈々子は、悟の素人が齧った程度の民俗学を、もう口出しするなと言わんばかりに、あっさりと一蹴した。
「で、何を言いたいかと言うと、変に陰に籠ると、それはどうしても隠密裏になってしまうわけ。つまり、人様にオープンにすることを躊躇させてしまうのね。オープンにしたくても、それが当たり前のことになってしまえば、おいそれと口にするなんてことが出来なくなってしまう環境になっていくのよね」
 奈々子の言いたいことは、みんななんとなくわかった。
 それぞれに言葉の受止め方が違ったとしても、奈々子の言いたいことの本分は、理解出来ている。
「オープンで何が悪いんだってことでしょ」
 臣吾の言った言葉が、もっとも的を得ている。
「そうゆうこと。スケベな人がいなければ、アダルトサイトなんて存在する必要ないでしょ」
 人間は、食欲、睡眠欲と並んで、性欲が三大欲求のひとつとして持ち合わせていることは、多くの人間が知っている。
 オープンにするか否かは別として、誰しもが少なからず有しているはず。
 聖人君子と言われる人にだって、あるに決まっている。
 だからこそ、程度は別にしても、スケベであることに、何んら恥ずかしむ必要はないんじゃなかろうか。多少のカミングアウトは、あって然るべき。というのが奈々子の考えだ。


「ごめんね。余計なことをベラベラと。寄り道し過ぎちゃったわね。では、本題に戻りましょう」
 奈々子も、余計なことを話し過ぎたと感じたのか、自重気味に言った。
「そういうことだから、まずはうちからスタートさせてもらおうと思うんだけど」
 大信は、百合子に目配せをし、小さく頷く百合子を確認したうえで言った。
 百合子の顔は、更に緊張の度を増した。目はテーブルの上の一点を見つめているが、頬が心なしか引きつっているようにも見える。
 それを聞いた奈々子は、大信に耳打ちをした。
「百合子さんって、恥辱系でしょ。だったら、最後まで引っ張った方が効果あるよ」
 出来るだけ長く、緊張と興奮を維持させる。
 その時間が、頭の中での妄想やスケベな想像を助長させる。間違いなくドM体質であろう百合子には、待たされる時間、聞かされる時間が長ければ長いほど、効果覿面なはずだ。
「そうなの?じゃあ、そうするよ」
 大信は、奈々子の助言に従うことにし、百合子に耳打ちした。

「大ちゃんはああ言ってるけど、百合子さんはゲストだからね。まずは、こっち側から話するのが筋ってもんでしょう。いいよね?」
 奈々子は、全員の顔を見回して言った。
「俺は、どっち側の人間っスか?」
 後追い組の透が、奈々子に聞いた。
「あんたは、こっち側に決まってるでしょ。百合子さんはゲストよ。ゲスト。あんたは、勝手に手ぇ挙げて、後から入ってきたんだから、むしろ最初にご披露してもいいぐらいよ。どお!?」
 奈々子は、透の額をピシャっと軽く叩いた。
「まあまま、奈々ちゃん。そんなに虐めなくてもいいじゃん。心の準備もあるだろうし、念の為優香ちゃんに聞いてみてからの方がいいと思うよ。だから、トップバッターは、俺からいかせてもらうよ」
 悟が口火を切った。

 店は閉店し、臣吾たち以外は店内に誰もいない状況。誰かに話を聞かれることは無いのだが、臨場感をアップさせるためなのか、ひそひそ話を始めるかのように、悟は前傾姿勢になり、口を開いた。

 数世代前のエロじじぃたちが仕掛けた、エロの饗宴が、時空を越えて、その末裔たちによって語られ始める。


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