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『手』
【ホラー 官能小説】

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-1

入院から1週間が経った。木田の頬がこけ、入院時より手足がほそくなっていた。だがこれは全身のむくみが取れたおかげであり、むしろ血色は良くなっていた。
「採血の結果もいいですね。輸血とバランスの良い食事が効いたんでしょう。原因は正直なところまだ分かっていませんが…まぁ、あと1週間あれば退院できますよ」
医者からの有り難い言葉も木田の耳には入らない。退院できたとしても再び『手』は襲って来るに違いない。陽菜から渡された札がなくなれば、その日には甘い地獄に突き落とされ、最後の1滴まで生命を搾り取られてしまうだろう。何しろ、今でも毎晩のように『手』は木田の前に現れるのだ。最初は夢だった。だが今はあの部屋と同じ、金縛りで動けなくなった木田の体に『手』が襲いかかる。かろうじて札と塩に助けられ、『手』が木田に触れることができないのだ。だが、その僅かな望みももはや失われかけていた。精塩はみるみる色がくすみ、さながら凝固した血液のようだ。札も次々にボロボロの灰になり、最後の1枚も指先ほどの切れ端だけになった。これがなくなったら死ぬ。退院までの1週間は持たない、おそらく今夜にだって…。
病室が空いていないため、嫌々個室で何日も心細い夜を過ごしていたがもう耐えられない。朝の検温に回ってきた看護師に、大部屋への移動を願い出た。
「分かりますよ、入院が長引くと不安になりますから。夜になるといろいろ考えてしまうんでしょ?」
熱を測りながらその看護師は言った。木田は適当に空返事をしたが、あまり会話の内容は耳には入らなかった。不安はあっても体は健康になりつつあるのだ。健康な20代の若者が綺麗な看護師を見て何も思わないはずがない。彼女のかがんだ時に見える胸元の谷間や、白衣に透ける下着に意識が集中していた。
「木田さん、少し気が晴れるかもしれませんから、体を拭いてあげましょうか?ずっとお風呂にも入れてないでしょう?」
「はい…でも、毎日自分で拭いてるので…」
「人にしてもらうのも、いいものですよ。こういう時じゃないと人妻に体を拭いてもらえることってないでしょ?」
その一言で股間が膨らみ始めた。こんなこと、いつ以来だろうか。
「……お願いします」

大部屋への移動を希望していたのが、まるで嘘だったかのように木田の心は興奮していた。体を拭く看護師の手が、非常に厭らしく感じた。
「前を向いてもらえます?」
「あ、いや、背中だけでもう十分ですから」
そんなことをしたら、股間を膨らませているのがばれてしまう。仕事で拭いて下さる人に、疚しい期待を抱いていると思われては…。
「大丈夫ですよ、生理現象ですから気にしないで」
既にばれていることが恥ずかしかったが、開き直って看護師の方を向いた。さっきまでピッチリとめられていた白衣のボタンが、ひとつ外されていた。
「そこも拭いてあげますから、脱いで頂けますか…」
上気した表情の看護師は、動かない木田を仰向けに寝かせ、ズボンとパンツを脱がせた。
二人の間が無言になった。看護師は木田の足の間に座り、濡れたタオルで入念に汚れを拭き取りながら木田のいきり立った竿を上下に扱いた。無意識に腰が動く様子を見ながら、看護師は「ふふ…」と笑った。その声に聞き覚えがある…得も言われぬ快感に震えながらも、妙な胸騒ぎがした。
「あの…城野さん…やっぱりよくないですよ、こういうの…」
「じゃあどうして…ん…木田さんは胸を触ったりしてるの?んんっ」
仰向けになっているのだから、触れるはずがない。目を開けて頭を上げると、『手』が看護師の白衣をはだけさせ、控えめな乳房を愛撫していた。
何で気付かないんだ…。
城野智美と書かれたネームバッジはシーツの上に落ち、両方の乳首をこねられて必死で声を堪えている。
「ダメっていいながら積極的…んんん…」
木田に責められていると錯覚しているらしい彼女は、木田の上に跨がってぺニスを頬張り、口で味わい始めた。
「もう駄目です…出る!」
久しぶりだったからか、異常な量の精液を口腔内に注ぎ込んだ。
「あの…」
「退院したら…それくらい積極的に誘って下さいますか?」
生きていればだけど…。
木田は息を切らしながら無言で何度も頷いた。


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