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1.女体妖しく夢現(ゆめうつつ)
【その他 官能小説】

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女体妖しく夢現(ゆめうつつ)-14

(14)


 裸の理沙……その体を実感しながら眠ってしまったのは私のその時の信念めいた一途なこだわりがあったのはまちがいない。
(いまは、できない……)
体の反応とは裏腹に、欲望を制御し、その気持ちを守ろうとする自分がいた。

 理沙は京都の話に気持ちが高揚して、それまでの触れ合いと相俟って身を任せる気になったのかもしれない。
(しらふだったらどうだったが……)
覚え始めたビールを飲んだ酔いがなかったら……。
 翌朝、理沙の様子がいつもと違っていた。そう感じた。笑顔がない。怒っているような雰囲気に被われているようだった。


 旅行の手配が済み、京都へ出発となった前日のこと、早々に支度を終え、理沙は何度も荷物を確認してはメモと見比べていた。嬉しくて落ち着かない様子が可愛かった。
(修学旅行だ……)
この喜びを理沙は知らない。
「楽しみ?」
「うん、楽しみ」
本当はもっと楽しかったはずだ。何日も前から思い描く歴史ある街。友達と巡る思い出の時間。……それらを再現することはできないが、せめて中学の思い出になれば……。

 ふと思いついた。
「理沙、美容院行ってこいよ」
「え?」
髪は肩に届くほどだが、しばらくカットしていないのは乱れた伸び方で私にもわかる。
「いいよ。予約してないし」
「行ってこい。電話して探せばあるよ」
半ば強引に行かせた。

 帰ってきた時の恥ずかしそうな顔は忘れられない。
「切り過ぎたかな……」
「きれいだよ。可愛い」
整った女の髪は見えなかったものを際立たせることがある。より中学生らしくもなり、また、ほんのりと香るような色香が染まっているようにも感じたものである。

 2泊3日の旅。旅行といえば、私も修学旅行以外、行ったことはない。2人でガイドブックをっ顔を寄せて見ながらあれこれ計画を立てる楽しさはほとんど経験がない。
 金閣寺、銀閣、清水寺。……
「全部回りたい」
「行けるよ。2泊するんだから。楽々だよ。あと、二条城や三十三間堂」
「みんな行ったとこでしょう?いいの?」
「よく憶えてないし。何回行ったっていいんだよ」
触れるほどの髪から『美容院のにおい』がした。
 
(理沙……)
そのにおいを何気なく追うともなく追ううちに私の心が蠢いた。その『におい』はその時の私にとって『大人のにおい』だった。
 よく部屋で嗅いだにおい。多くのホステスたちから流れてきた。マナミからも、亜弥奈からも……。
 理沙と比較したわけではない。比べることはできない。だが、大人の理沙がぼんやりと私の中に映じた。心に彼女が大きくなっている気がした。

 


 

 



 
 
 


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