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1.女体妖しく夢現(ゆめうつつ)
【その他 官能小説】

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女体妖しく夢現(ゆめうつつ)-12

(12)


「大学行ってるって、すごい。勉強できるんですね」
「勉強なんかほとんどしたことないよ」
いろいろな大学、入学方法も様々だ。理沙にそんな知識はないらしい。
「高校、行かないの?」
「就職します。神奈川に、寮がある工場があって、そこにしようかと思ってるの」
「高校、行けよ。行ったほうがいいよ」
理沙はちょっと驚いた顔をして、
「そんなこと言われたの初めて……」
「誰も言わなかったの?」
「だって、無理でしょう。勉強は付いていけないし、内申書だって滅茶苦茶じゃない?先生だって言わないもん」
たしかに難しいかもしれない。が、受け入れるところは必ずある。
「通信だってあるし」
「……知ってるけど……」
理沙はどこか淋しそうに笑った。


(楽しい)
理沙といることが楽しい……そう感じるようになった。食事をしながらとりとめのない会話。テレビを観ながら笑い、2人してクイズを競う。当然私のほうが多く正解する。
「ずるいよ。大学と中学だもん」
「わかった。それじゃ、理沙が出来たら3点、俺は1点。点数でやろう」
それでも私が勝った。
「やっぱりだめだ」
「理沙の負け」
「頭きた」
理沙がふざけて飛び掛かってくる。
「やめろよ」
「許さない。ばかにしてる」
「してないしてない、理沙、してないよ」
いつか『理沙』と呼ぶようになっていた。
 明るい話、笑いのある生活……。忘れていた。いや、初めてかもしれない。マナミや亜弥奈と過ごした時にはなかった雰囲気であった。


 たまたま話の流れから修学旅行の話になった。
(修学旅行に行っていない)
「行ってないの?」
「ごたごたしてる時に終わっちゃった……」
転校した今の中学でも、もう済んだあとだった。
「京都……。行きたかったなあ」
心持ち顔を上げて遠くを見る目になった。澄んだ眼差し……美しいと思った。

「京都か。お寺や神社ばっかり回って、つまんなかったな。京都行きたいの?」
「自分だけ行ってないって、なんか、さみしい……」
浮かべた笑みが淋しそうで、だがその目はやはり澄んでいた。

「働いてお金貯めたら、京都に行くの」
「俺が、連れてってやるよ」
「ほんと?」
「すぐじゃないけど……」
理沙の手を握ったのは心の赴くままであった。
(俺なんかよりずっと孤独だった……)
込み上げるものがあった。
 理沙が寄り添ってきたのはどんな想いからだったろう。肩を抱き、胸に包んだ。
(理沙……)
腕に力がこもり、理沙も私にしがみつくようにすり寄った。2人とも言葉はなかった。

 不思議な感情であり、初めての情欲が満ちてきていた。幼いながら女の柔らかさが伝わっている。体験した『女』とはどこか違う若い体臭。しかし、私は完全に勃起していた。さらに理沙の体を撫で、愛おしみ、やさしく『愛撫』した。
 目を閉じて私に身を任せる理沙。マナミや亜弥奈であれば体を貪っているだろう。昂奮はしている。なのに、質の異なる昂ぶりが起こっていた。

「重いでしょ?」
「重くないよ……」
理沙は微笑みながらまた目を閉じた。
「いい気持ち……」
髪に頬を当てた。
「このまま眠っちゃいそう……」
「いいよ」
「いいの?」
理沙は甘えている。……私も、甘えていた。

 理沙はほんのひと時、眠った。小さな寝息を立て、私が体勢を変えた動きで目覚め、
「寝ちゃった。お皿洗わないと」
私から離れていった。
「手伝うよ」
「あたしの仕事。お風呂入ってきたら?」
つい先程まで子供のような寝顔を見せていたのに、振り向いた顔は大人に見えた。

 布団に入って、頭は理沙を追っていた。彼女の何を追っているのか、混沌としている。(体を求めているのか……)
勃起している。確かな性的反応。……しかし、抑制している悶えた感情はない。それでも理沙が私の中にいっぱいになって心地よい重みで押してくる。
(理沙……)
 風呂に入っている音が微かに聞こえていた。

 眠っている私の布団に理沙が入ってきたのは何時ごろだったのか、ぼんやり目覚め、シャンプーの香りが漂った。
(理沙……)
寄り添った彼女の息を肩口に感じながら私は安らかな想いを味わいながらいつかまた眠っていた。目覚めた時、彼女はいなかった。
  


 



 






 




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