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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-10

 「今室野さんにからかわれて小山君少し興奮しちゃったのよ。聞き流せばいいんだけど」
 「あいつの言葉は聞き捨てならないんだ」
 「室野さんかぁ。私もちょっと彼女苦手だな」
 「そうかな、いいとこもあるんだけどなぁ」
 「裕子は心が広いもの」
 「広過ぎる」
 「でもやんちゃな妹だと思えばいいのよ。うちの妹なんてもっと酷いのよ」
 「あんな妹がいたら追い出してやる」
 「小山君て妹がいたんじゃ無かった?」
 「いるよ」
 「あんな感じ?」
 「全然違う」
 「どんな感じ?」
 「なんでも言うこと聞いて素直で可愛い」
 「小山君に似てるんだ」
 「僕は違う」
 「田宮さん、西高の文化祭に行ったんでしょ? どうだった?」
 「面白かった」
 「行ったのか」
 「小山君に振られたから1人で行ってきたわ」
 「小山君誘ったの? どうして行かなかったの?」
 「都合が悪かった」
 「行きたくないって言ってたじゃない」
 「都合が悪いから行きたくなかった」
 「本当かなあ」
 「本当」
 「私1人で寂しかった」
 「嘘よ。田宮さん西高だって何処だって友達いっぱいいるじゃない」
 「それは唯の友達だもの」
 「男の友達もいっぱいいるじゃないか」
 「だから唯の友達」
 「唯の友達じゃないって婚約者とか、そういうの?」
 「え? そこまで行かなくても其処まで行きそうなのとか」
 「高校生で婚約は早すぎるわよ」
 「でも粕谷はもういるんだ」
 「婚約者が?」
 「うん」
 「本当?」
 「うん、婚約者では無いのかな」
 「まさか婚約者では無いでしょう?」
 「いずれ結婚するかも知れないって言ってた」
 「そんな程度なら私にもいっぱいいるわよ。良介君と私だっていずれ結婚するかも知れないじゃない」
 「なんで?」
 「だって先のことは分からないでしょ」
 「親が勝手に決めちゃうとか?」
 「まさか」
 「小山君の親ってそういうことする人なの?」
 「分からない。聞いたことないから」
 「今度聞いてごらん」
 「うん」
 「お母さん、文化祭見に来るの?」
 「さあ、来ないんじゃないか」
 「誰も来ないの?」
 「分からない」
 「誰か友達呼んでないの?」
 「呼ばなくてもみんな来る」
 「他の学校の友達?」
 「そんなのいない」
 「なんだ。同じ学校の友達なら呼ばなくても来るに決まってるじゃない」
 「でも水泳の対抗試合やるから他の学校の女の子とも知り合いでしょ」
 「水泳やる女に知り合いはいない」
 「あら、この間石神井高校の水泳部が来た時小山君にベタベタしてた女の子がいたじゃない」
 「そんなのいない」
 「水着なのに小山君に抱きついてはしゃいでいたじゃない」
 「そんなのいたかな」
 「いたわよ。厭らしい。水着なんて厚さ1ミリも無いのよ。裸で抱きついてるのと同じだわ」
 「僕が抱きついた?」
 「違う、その女の子が小山君に抱きついたの」
 「覚えて無いなあ」
 「うちの2年生の女の子はどうなの。名前知らないけど平泳ぎの子」
 「山田のこと?」
 「名前知らないけど背の小さい子」
 「じゃ山田だ」


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