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僕は14角形
【ショタ 官能小説】

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僕は14角形-30


22

 買い物なんてのはプラスティックや金属で作られた物以外は男性なら誰だって嫌いだ。
だから学校に横付けしたベンツ6.9の後部座席に押し込んだ姫乃先輩には断固としてちゃらちゃらした店に行くことは断固拒否した。

「絶対に嫌だからね、あれこれ悩んだり選んだり店員のお世辞を聞いたりするぐらいならその場で精神科の医者が総出になっても解決できない自閉症になってやる」

 草冠いちごが、不思議そうに僕を見た。

「誰もお店に行くなんて行っていないわよ?」

 そういえば首都高を越えて車は東にひた走っていた。住宅街と森が続き、ビルはまばらだ。繁華街なんてかけらもない風景が流れ去って行く。
 やがて着いたのはお洒落ではあるけれど、まるで人気のないビル。入口には頭の切れそうなざっくりした嫌みのない服装の女性が立ち尽くしていた。

「お久しぶりでございます、草冠のお嬢様」そのままいちごはすたすたと会社の中に入った。意味不明の展示室みたいなのがある。

「じゃあ、シルクから始めて。詩音、この中の布で『いいな』と思った物を選んで」

 触ると、つるつるしたのから不思議なファブリックが描かれた物、何とも形容しがたい美しい色彩に彩られた物、いろいろある。僕は適当にいくつか選んだ。

「次はカシミヤ」

 こんな事を繰り返して、あっという間に終わってしまった。
 それから別室に案内され、赤い眼鏡の印象的な女性が僕の前にかがみ込み、メジャーが縦横に神速の瞬きを描いたかと思うと、女性は立ち上がって、丁寧なお辞儀をした。

「さあて、次に行きましょう」

 僕はうすうす、これが草冠いちごの「買い物」であるらしいことがわかった。
 ベンツ6.9は風のように今度は西に走る。都会だけど、閑静なビル街だ。その中でも奇妙に透明感のあるビルに連れられて行く。入口の上に「Tiffany&Co.」と洒落たレリーフ文字が輝いている。が、やはり静謐な空間だ。今度は品の良い仕立てのスーツを着た男が出迎えた。

「お久しぶりです、草冠様」

「この子なの。何かいいのある?」

「は、こちらにどうぞ」男はいくつものドアをくぐり抜けて、広々とした一つのモノクロームの無機質な部屋に案内した。広いのにも拘わらず、部屋の中央には50センチ角ぐらいのショーケースが置いてあるだけだ。その中に、目に見えないほどの小さな輝きが無数に光っていた。

 いちごはざっと見回して、そっけなく「これね。左耳。すぐに頼むわ」

 男は大仰に驚いて「レインボーですか、さすがに草冠様」

「このおと……この娘ががたがた言わないうちに終わらせてちょうだいな」

 男が手を一つ叩くと、純白の衣装に包まれた妙齢の女性が扉を開けて入って来た。片手に何か光る物を持っている。

「失礼します」女性は詩音の左側に回り、なにか「カチリ」と音を立てた。すかさず男性が女性に何か手渡す。およそ一分。何故か違和感がない。

「ほ〜ら、よく似合うわ」姫乃が嬉しそうに鏡を僕の方に向けた。

 僕の左の耳たぶに光る七色の虹彩。それはダイアモンドのピアスだった。

「な……」

「ダイアモンドの七つの称号の中でも最高の物でございます。品質的には英国王室の『カリナン』にも引けを取る物ではございません」男は満面の笑みを浮かべ、自信たっぷりにそう言った直後、

「なんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁこりゃあああ!」

 僕の悲鳴が広い部屋の中に響き渡った。


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