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お世話いたします……
【その他 官能小説】

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お世話いたします……-3

(3)

 朝、8時半に出勤。15分後に社長と専務が迎えの高級外車で出勤する。私とお手伝いさんで見送る。私は紺色のスーツ姿である。十万近いブランドもので、採用が決まった日に専務に連れられて作ったものだ。
「とりあえず……」
紺色、黒、グレー、3着作ってもらった。会社の支給なのである。
(服装だけは立派な秘書……)
でも、何をしていいのかわからない。わからないというよりすることがないのだ。
 お手伝いさんは藤堂さんといい、齢は70歳くらい、私の母親と同じくらいで物静かな人だった。掃除は専門の業者が10時に来て、午前中いっぱいかけてトイレや風呂場まできれいにしていく。食事の支度は藤堂さんの役目になっている。私のお昼も作ってくれる。
「何か手伝いますよ」
「これはあたしの仕事。新田さんは秘書さんですから」
「秘書だなんて……」
何とこたえていいか、恥ずかしいばかりだった。

 
「私、何か申し訳なくて。何もしていないんです」
10日ほど経って、私は専務に心苦しい想いを伝えた。
「自宅だからそういう時もあるわ。そのかわり忙しい日は残業してもらうこともあるから。その分だと思って気にしないで」
本を読んでもテレビを観ていてもかまわない。
 奥様に言われて少しは気が楽になったが、何もすることがないというのは妙に疲れるものであった。
 ひと月後、給料が振り込まれたのを確認すると私は再び気が重くなってきた。

 ある日の夕方、車の音がして社長と専務が帰ってくるなり、
「新田さん。ちょっと手伝って」
専務の声に外へ出ると社長が杖をついている。
「どうなさったんですか?」
「ちょっと、捻挫してしまってね」
「新田さん、支えてあげて」
「はい」
社長の腕をとると、専務が言う。
「腰に手を回して、ベルトをつかむの」
「はい」
杖は専務が取り上げて社長が私の肩を抱き寄せた。ずしりと重みがかかってくると思っていると、そうでもない。
「杖はいいんですか?」
「ああ、たいしたことはないんだ。すまないね」
「2階の寝室まで連れてって」
「はい」
専務の言葉を背中に聞いて二人三脚みたいに階段を上っていった。

 社長の寝室は20畳ほどもある。ベッドはダブル。社長1人の寝室なのだと藤堂さんの案内で知った。
「ありがとう。用事があったら呼ぶから」
「お大事に……」
 
 部屋を後にして、私は少し戸惑って心が揺れていた。
(私……なんだか……)
少し気持ちが昂っていた。
(社長……)
寄り添って部屋まで歩く間、私は久しぶりに『男』の感触に女の疼きを感じていたのである。さらに、離れ際、社長の手が私の腰に触れたことで、
(ぞくっとした……)
ベッドに座る時にたまたま支えを求めて触れたのだろうが、
(感じた……)のだった。

 階下に下りると藤堂さんが帰るところだった。
「専務は?」
「会社に戻られました。それから……伝言があります」
メモが手渡された。
『急ですが、今日は残業をお願いします。8時頃に戻りますのでそれまでいてください』
そして最後に、
『主人が入浴する時、介助していただければ助かるのですが……』
(え?……)
歩行が不安定なので手を貸すということなのだろうが、私に経験はない。おそらく専務1人では心もとないので手伝ってほしいということなのだろう。ということは8時過ぎになる。
(遅くなるな……)
まあ、残業代はつくだろうし、給料はたくさんもらっている。これまで何もしなかったのだから少しは役に立たないと。……
 食事の支度は藤堂さんがすべてすませてある。結局、何もすることがない。
(そうだ、コーヒーでも持っていこう)

 





 


 


 


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