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危険な自慰
【その他 官能小説】

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イミテーション-1

 山の中腹にある美術館。ここの展示物はちょっと変わっていることで有名だ。
 オリジナルの絵は一枚もない。全てコピー。といっても、違法なものではない。権利者の承諾と正規の契約を経て、特殊な金属板の上に精密に再現されたものだ。もちろん、キャンバスの布地の凹凸、油絵の具の抑揚まで、一切の妥協は無い。3Dの立体形状データに色の要素を加えた4Dスキャン&4Dプリントしたものに、職人が一枚一枚丁寧に手作業で仕上げを施している。
 それがゆえに、ありえないようなラインナップが実現している。イルミタージュ、メトロポリタン、ルーヴル…挙げればきりが無いほどの世界の美術館のいいとこどり。どうしてもオリジナルが見たい、というのでなければ、最高の美術館と言えるかもしれない。
 開館少し前に着いた私は建物の陰に駐車し、ロードスターの幌を被せて中で服を着た。さすがに全裸で美術館には入れない。
 数台の観光バスが来た。よく分からない言葉で賑やかにしゃべっている人たち、オシャレしてるのに妙に外してるオバサンたち、イイ感じのお姉さん一人とその他大勢のグループ、なんの集まりか分からないお兄さんたち。
 いろんな人がやってきた。私ももちろんその中の一人。
 開館した。チケットは事前にスマホで取ってある。自動改札へ向かった。
 「〇△□◇▽☆!!」
 となりの団体が何かもめている。チケットがどうとか言ってるみたいだけど、受付のお姉さんの日本語も英語も通じていないみたいで、いっこうに入場できそうにない。後ろにはかなり長い行列が出来てしまっているが、とりあえずお先にどうぞ、なんていう譲り合いの文化は彼らには無いみたい。
 今日からバイト始めました、って感じの、頼りないを絵にかいたような、髪ぼっさぼさ、制服ゆるゆる、のお姉さんがたまらず叫んだ。
 「お待ちのお客様、スマホからもチケットをご購入いただけまーす!」
 あー、それ一番ダメなやつだよ。
 「どこからお金入れるの?」
 爺さんがガラケー出した。
 ほらね。
 「そうでしょ?そうなのよ。スマホって便利そうだからうちの息子の嫁に買って送ってって言ったんだけど、お店に行ってもらわないと無理です、しか言わないのよ。死ぬを警察しないと通夜できない、ハワイのある所ならインターホンだけはできるけど、でもそれじゃ困るでしょ?なんてわけの分からないこと言って誤魔化すの。代金はもちろん払うって言ったのによ?その辺の店で買って送るだけじゃない。ほんとにやる気がないんだから。バカにしてるったらないわ。ねえ、あなたもそう思うでしょ?」
 そのお嫁さんの対応は正しい。シムを契約しないと通話できない、wi−fiのある所ならインターネットだけはできるけど、という説明を聞き取れないお年寄りに格安シムのスマホを送るのは危険だ。後でメンドクサイ相手をさせられるのが目に見えている。
 オバサンに捕まったバイトのお姉さんは、はあ、はあ、そうですか、はあ…、しか言えないでいる。その横からは爺さんがガラケーと千円札を突き出している。
 あーあ、お姉さん、先輩に怒られてるよ。『ダサいメガネ』と書いて『あなたの顔に乗ってます』と読む、ってぐらいのどうしようもないメガネが汗の蒸気で曇ってる。
 外のドタバタをよそに、私は落ち着いた照明のエントランスに入場した。
 ああ、涼しい!山の中といっても夏だからね、今は。冷房がありがたい。ノースリーブのレモン色のシャツにベージュのチュール・スカンツという涼しげな格好をしていても、外に居ればやっぱり暑い。
 順路、と書かれた案内板に従って右、左、と弧を描くS字通路を抜けると、そこは見上げると後ろに転びそうなくらいに天井の高い、広い空間になっていた。
 「うわぁ…。」
 思わず声が出た。それは残響を伴って、思いのほか大きく響いた。
 天井いっぱいに巨大な絵がびっしりと描かれている。それはある教会の有名な天井絵をそのままフルスケールで再現したものだ、と知識としては知っていても、実際にその空間に立ってみると圧倒的な迫力にめまいさえ覚えた。
 首が痛くなるほど天井絵を見上げつつホールを抜け、通路を進んで次の部屋に出た。
 しばらく歩いたところで一枚の絵の前で自然に足が止まった。
 赤い花飾りの麦わら帽子だけを身に着け、川のほとりの石の上に白い布を敷いて座っている少女。恥じらうように俯き、左手で左の胸を隠しているが、右の乳房は完全に見えている。もちろん先端まで。太腿はキュっと寄せられており、陰毛は見えない。
 「ふう…。」
 この絵を見る時、私の胸にはいつもモヤモヤが広がる。
 少女は明らかに恥ずかしがっている。片方とはいえ、胸を隠してさえいる。なのに、白い素肌を画家の目に晒し、その姿を絵に描かれている。
 この時、彼女はどういう気持ちだったんだろう、どういう気分だったんだろう。恥ずかしいのをじっと堪えつつ、その一方では見られることに何らかの興奮を覚えていたりはしなかったのだろうか。
 ヌードやAVも裸体を晒し、それを写真や動画に撮られる。しかし、それらは目的に一直線であるがゆえに浅い。
 それでいい。それでいいのだ、そのためにあるのだから。
 でも、明らかにそれとは違う深い情欲をこの絵には感じる。モデルの想いを描く画家の想い、それを見つめる鑑賞者の想い。永遠に未完成の芸術。
 じっとみつめながら腕組みをした。そしてノースリーブの脇の所に指を引っ掛け、横に捲りながらブラの隙間に指を入れて乳首を弄った。
 左右には何人もの人がいる。でもみんな絵を見ることに集中していて、私の方なんか見ていない。
 中指で先端を転がしていると、そこはすぐにコリコリになった。人差し指も入れて挟み、グリグリ回してブラに擦り付けると、胸全体にジュワーっと快感が広がっていった。


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