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危険な自慰
【その他 官能小説】

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ありえない絶頂-1

 ギュウギュウに詰め込まれ、耐え難い苦痛を強いられる通勤電車。でも、私はむしろ満員電車に乗るのが待ち遠しくてたまらない。それは、誰にも言えない私だけの秘密の悦びがあるからだ。
 私がいま手を突っ込んでいるスカートのポケットには底がない。つまり、物を入れればそのまま落ちる。
 そんなポケットには意味がない?その通り。ほんの数週間前の私ならそう思っただろう。だけど、今の私には無くてはならないものだ。
 それは最初、偶然の出来事だった。
 満員の通勤電車が大きく揺れ、前に立っていた女性が寄りかかってきた。そのとき、彼女のショルダーポーチの角が私の股間に激しく擦り付けられた。
 「え…」
 たったそれだけのことだったのに。
 完全に無防備だった私の敏感な部分に猛烈な疼きが湧き起り、怒涛のごとく全身に広がっていく快感に両足がガクガク震え、腰が砕けそうになった。
 そして、立っているだけで精いっぱいの私は、何の抵抗も出来ないままに絶頂を迎えてしまった。
 幸い、誰にも気づかれなかったようだ。気付かれはしなかった…けど。
 名も知らぬ群衆の真っただ中で、若い女がもっとも見られたくないその瞬間を晒してしまった…。その事実は私を恥辱と恐怖に陥れた。
 それからというもの、満員電車に乗るたびに私の心には正体不明のモヤモヤが浮かび、纏わりつくようになってしまった。いや、本当は分かっていたんだと思う。それが何であるのかを。どうすれば解消できるのかを。
 でも…。
 実行するわけにはいかなかった。そんなバカげたことは。
 そんな悶々とした日々が続いたある朝。
 いっこうに消えないモヤモヤに苛立った私は、その発生源である下腹部に軽くバッグをぶつけた。電車の揺れによる偶然を装って。
 …。
 もう一度。
 …。
 今度はもう少し強く。
 …。
 蚊に刺された所を掻けば、さらに痒くなる。掻いてはいけない。でも、一度掻いてしまえばもう掻かずにはいられなくなる。そして掻き続けるほどに、どんどん強く掻きたくなっていく。
 気が付くと私の右手はスカートのポケットの中にあった。
 ジリ、ジリ。
 磁石に吸い寄せられるように、太腿の内側へ、内側へと震える指先が迫っていく。その動きをポケットの布越しに感じた太腿の肌に、ザワザワとした皮膚感覚が広がった。
 いけない、こんなことは。周りにはたくさんの人々が居る、今すぐ手を止めてポケットから出さなければ…。
 そんな私の抵抗など軽く踏みにじるほどにその磁力は強く、近づきはしても離れることは出来なかった。
 ジリ、ジリ。
 指が移動するにつれ、呼吸が荒くなり、鼻息の音が大きくなっていくのが自分でも分かった。周囲に聞こえてしまうのではないかと心配するほどに。
 ジリ。
 不意に、正面の椅子に座っている男性の視線を下腹部のあたりに感じた。
 気付かれたか?いや、スカートの中の手の動きなど分かるのだろうか。
 視線を感じても、私の指が動きを止めることはなかった。
 そして、ついに指先はパンティの淵に触れた。
 だめだ、これ以上指を進めたら…。
 指は止まらない。パンティの布の上を、磁力の発生源へと一直線に吸いつけられていく。
 「う…。」
 右手の中指が、ポケットとパンティの布越しにそこを捉えた瞬間、抑えきれずに小さく声を漏らしてしまった。
 その時、私の中の鍵がバキン、と弾け飛んだ。
 そして今。
 私はパンティの横から指を差し入れて直接弄っている。底の無いポケットからスカートの中に入れた手で。
 眠っている人、本を読んでいる人、スマホを弄っている人、周りからの圧力に耐え、足を踏ん張っている人。
 それぞれにさまざまに揺れる満員電車内で過ごす人々に囲まれて、私は指先に粘り着く液体を敏感な部分に塗り付け、こね回している。
 いつ誰に見られ、バレてしまうかもしれない危険な行為。
 それは、スリルを味わうなんていう生易しいものじゃない。
 ありえない状況でしてしまう自分を想像しただけで…ああ、私のカラダは熱くなり、欲情を掻き乱され、どうすることも出来ない疼きがそれを実行させてしまうのだ。
 私は、ありえない状況での自慰をやめられない女になってしまった。


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