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危険な自慰
【その他 官能小説】

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オープン・エア-1

 「お待たせしました。こちらのお車で宜しいでしょうか?」
 夕べ泊まったホテルのすぐ近くにあるレンタカー店。
 メカニックっぽい制服を着た店員の女の子が車を回してきた。深く被った帽子の後ろには、少しだけ明るくしたセミロングの髪が束ねられている。はきはきとした応対が心地よい。
 ユーノス・ロードスター、第一世代。通称NA。海外名MX−5ミアータ。ずっと乗ってみたかった車だ。ちなみにミアータとはドイツ語で『贈り物』という意味。走る悦びを、みたいな想いで付けられた名前だろうか。
 最新の第四世代、通称NDも気になるのだが、まずは原点を知りたくて。昔のスポーツカーにはよくあった、ライトがパカパカ開閉するタイプであることにも興味があった。リトラクタブル・ヘッドライト、というらしい。当時の法律の関係で、低い車高のスポーティデザインとライトの高さの基準を両立させるために…みたいな話はやめておこう。
 それにしても、なんという車高の低さ。ボディに遮られること無く、車の向こうが完全に見えている。
 「こうやってオープンにします。」
 幌が開いた。
 「わお。」
 思わずアメリカ人みたいな声が出てしまった。
 ドアも低い。風呂桶みたいにまたいで乗れそうだ。
 「屋根、閉じて行かれます?それともこのまま…」
 「このままで。」
 即答。
 「かしこまりました。こちら、キーです。どうぞ。」
 差し込んで回すやつだ。あたりまえか、古い車だからね。それがまたいい味出してる。
 ボディカラーはブリティッシュなモスグリーン。うーん、よく似合ってるね。
 胸をときめかせながらシートに滑り込んだ。直接地面に座っているかのように低い。
 「あ、一つだけ注意点がございます。大変車高が低く、屋根もありませんので、周囲から丸見えです。」
 「ですね、見られて困ることはしないようにしますよ。」
 キュキキ、ボウゥ。
 あっけなくエンジンがかかった。
 ブロロロオォォォ…。
 軽くアクセルを入れながら慎重にクラッチを繋いでいくと、滑らかにトルクが立ち上がり、すべるように動き始めた。
 悪くない。よく整備されている。タイヤも十分に新しく、この車に合ったものが装着されている。いい店だ。
 「行ってらっしゃいませ!」
 笑顔で帽子を振る店員の女の子が、楕円形のドアミラー越しに遠ざかっていった。
 最初の交差点で左へとハンドルを切った私は、思わず叫びそうになった。
 軽い!なんという軽さだ。まるで空気で出来た車であるかのように、スイっと回頭する。そして加速減速も想いのまま。慣性重力はどこへ行った?ってぐらい、とにかく何もかもが軽いのだ。他の車はオモリでもつけているのか、と思うくらいに。車重が1トンを切っているのはダテではないのだ。
 もちろん、単純な重さだけではなく、前後の重量配分、重心の位置、高さ、サスペンションのセッティングなどなど。全てが高次元でバランスよく仕上がってこその軽さだ。
 マニュアル車特有のダイレクトなパワートレインの手ごたえも、軽いがゆえになおさら堪能できる。アクセル一つで想いのままに速度をコントロールできるのだ。特に踏み込んでいった時に足の裏に感じるトルクの立ち上がりといったら…。それだけで何か出そうになる。オートマではけして味わえない快感だ。
 1.6Lノンターボの直4DOHCエンジンはたったの120psと非力だが、おいしい回転数を上手につないでいけばスペックからは想像も出来ないような俊敏な機動力を見せてくれる。
 さすがはギネスに載ってる車だけの事はある。
 こういう小さく軽い車の価値を分かってくれるオトコ、いないかなあ。まあ、どうでもいいけどね。だって私には最高の恋人がいるんだから。自分の指という。
 気持ちまで軽くなった私はしばらく市街地を走り、山の方へと上がっていく道に出た。タイトコーナーが連続する、いわゆる峠道というやつだ。
 道端の少し広くなった直線で未舗装の路肩に車を停め、周囲を確認しつつシャツを脱ぎ、ブラを外した。もう一度グルリと視線を巡らせてからスカンツとパンティを手早く引きずりおろして助手席に放り投げた。
 ドライヴィング・シューズ以外は全て脱ぎ捨て、素肌をオープン・エアに曝け出した。
 走り出す。リズミカルにシフトチェンジを繰り返し、速度を上げていく。それに伴い、風と横Gで私の胸が上下左右に大きく揺すられ始めた。
 その刺激で先端は程なくツンツンに硬くなり、ジンジンとした快感が胸に広がっていった。
 オープンカーにももちろんフロントガラスはある。しかし、意外なほどに風が入ってくる。サイドウィンドウを上げればそこそこ抑えられるが、それではつまらない。特に、今回のような目的では。
 陰毛までもが風に揺らぎ始めた。その中に隠れた蕾にも時折風の塊がボワっと当たる。
 こんな所で全裸をオープンにして大丈夫かって?
 まず、私は峠道には慣れているし、ロードスターはタイトコーナーをもっとも得意とする。だから、フツーの車に追いつかれる心配はない。
 また、ほとんどの観光客はロープウェイで登るし、早朝なので他の車とすれ違う可能性はあまりないと思う。
 まあ、すれ違ってもゆっくりこちらを鑑賞する時間など与えないけどね。ふふふ。
 ヒラリヒラリと舞うようにコーナーを抜けていくロードスター。まさに人馬一体。ああ、期待通りだ。名車の名に恥じない。
 どこまでも抜ける青空。木漏れ日に風が煌き、名も知らぬ鳥たちのさえずりに包み込まれて、私は裸体を剥き出しに晒している。
 風とGに胸を揉みしだかれ、陰毛をなびかせながら走る私は、最高の気分で一人旅…ん?
 ミラーに青い車が迫ってきた。


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