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紅い蝦蟇
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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-1

いちど射精して落ち着きを取り戻した私は、呼吸を整えてリビングに戻っていきました。
「あ……ビール……持ってきますね」
 そわそわと落ち着かない涼子の様子や、私を追い返す素振りがないことがわかると、私は狂喜のあまり思わず笑いがこみあげてきそうになるのを必死で押しとどめました。
(もう焦ることはないな……たっぷり時間をかけて……)
 大柄な涼子のからだから漂う甘いコロンの残り香を楽しみながら、私は煙草に火をつけました。


「あいつ、浮気してるんですよね……」
「知ってる。……Kから聞いたよ。しかも相手は……あいつはちょっと異常だよ」
「ですよね……ひどすぎて話になんないっていうか……男性不信になりそう……」
 つながらない携帯電話を放り投げたあと、涼子は私のすすめるままにグラスのシャンパンを飲み干していきました。ニューヨークの音楽シーンや、アメリカやヨーロッパの映画の話などで私と涼子は意気投合していました。TVのないリビングルームのなかでしっとりとしたR&BのBGMがムードを高めています。私は涼子の仕草から警戒心の固さがほぐれていくのをじっくりと待ちました。私にとって女性との会話は前戯のようなものです。まして男性経験が少なく心が傷ついている場合には甘いムードに酔わされやすいことを私は中年の狡猾さで見抜いていました。場合によっては手首を縛って無理やり自分のものにしてしまうつもりでしたが、私は正反対の責めかたを選びました。
 結果的に、それが功を奏することになりました。


「Kがうらやましいよ」
「どうしてですか……?」
「おれならぜったいに放さないけどな」
「またあ……冗談ばっかり……」
「おれじゃ嫌だろうけどさ……」
「そんなあ……やっぱり女は、深く愛されたほうが幸せだって思うし……」
「しつこいって嫌がるくらいだと思うよ。おれはふつうの男より情が深いから」
「わたしも深いですよ……」
「涼子ちゃんが情が深いことは、はじめて見たときから思ってた」
「……」
 ソファのうえで長い素脚を組みグラスを傾けていた涼子と一瞬視線が絡みあいました。
 ハーフと見まがうほどの美貌、いつもはクールな色を湛えている切れ長の瞳がかすかに濡れているように見えました。
 私の目の前に足の爪先が揺れています。
 フローリングの床のうえにクッションを敷いてあぐらをかいていた私からは、涼子を見上げるかたちになります。そのシチュエーションがまた、ふたりの間の距離を危険なものにしていました。
 時計の針は、深夜1時を過ぎていました。
「このままもし……Yさんと私が……どうにかなったらどうするつもりなんだろ……?」
「涼子ちゃんはおれを男として見てないって言ってたよ」
 私は白々しく嘘をついて涼子の反応を見守りました。
「おれが涼子ちゃんに気があることが、あいつには楽しくてしょうがないんだろ。涼子ちゃんは自分のものだって言いたいわけさ」
「ばかみたい……自分は浮気しといて……ほんと信じらんない……」
「涼子ちゃんを独占できるなら、おれなら何だってするけどね」
「……そんなに?」
「そりゃそうだよ……おれの気持ち……知ってたくせに」
私の言葉のひとつひとつが、シャンパンの心地よい酔いのなかで熱く甘い蜜液のように涼子の渇いた心に浸透していくのが見えるようでした。涼子はもう私の熱っぽい視線から逃れようとはしません。それどころか、ときおり悩ましげに髪をかきあげながら、焦れるように甘えっぽく見つめ返してくるほどでした。
「このペディキュア、綺麗な色してる」
「うれしい……。そんなとこ、ほめられたことないもん」
私はさりげなく指をのばして涼子の足のかかとを支えながら足の指先に軽くふれました。
「……あッ……」
「シルバーだけど……うすいピンクが入ってるね……」
「……うんッ……あッ……!」
 本気で抵抗していないことを確認しながら、私は涼子の足の指先からくるぶし、ふくらはぎを、刷毛をはくようにソフトに愛撫しながらその美しさを賛美しました。
「ほんと綺麗だよな……」
「やだ……恥ずかしいからもうやめて……」
「やめない……」
 冗談ぽく、だけど意地悪でSっぽいニュアンスを含ませると涼子のからだが敏感に反応するのがはっきりとわかりました。私の指が太股にむかって這いあがってくるのがわかると、涼子はソファのうえで悩ましくからだをくねらせて逃げようとしました。
「……ああ……だめッ……!」
「……誰にも渡したくない……」
 私は涼子の肩を思いきり抱き寄せて耳元で熱く囁きました。
「……いやンッ……ああ、だめ……はあンッ!」
憧れの涼子の甘い息の匂いを楽しみながら、私は優しくソフトに口づけを繰り返しました。
「ずっと欲しかった……はじめて見たときからずっと……」
「……ううンッ、はあンッ……!」
 Tシャツのうえからツンと上を向いたかたちの良いバストを揉みたてては、じっくりとキスに熱をもたせ、淫らに舌をからませて涼子の甘い唾液を味わいました。Tシャツのしたにブラをつけていないことがわかると、私はもう痛いくらいに勃起していました。
「……ちから抜けちゃう……」
「……ああ、涼子……涼子……」
 BGMの鳴り止んだ静かな夜の部屋のなかで、熱っぽい息遣いとお互いの舌を吸いあう音だけが響いていました・・・。


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