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紅い蝦蟇
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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「妻とセックスが合わない」、Kはそう言いました。

「え……? あの子は女王様なんだろ? だから結婚したんじゃないのか?」
 Kは溜息をつきながら首を横に振りました。よくよく話を聞いてみると、Kは外見と性格だけで涼子がSだと早合点したようなのです。


「たしかに昼間はドがつくくらいSなんですけどね。あいつもいまアパレルのお店を経営してるから、忙しくてつい男っぽくなるらしくて。そういうところがたまらなく好きで結婚したのにHのほうはぜんぜん違うんですよねえ……。つきあい始めの頃はどうもムリして僕に合わせてたみたいで。結婚すればなんとかなると思ったんですけどね・・・」
 驚いたことに、出会って結婚してからというもの、Kはまともに涼子とセックスをしたことがないというのです。私は開いた口が塞がりませんでした。
 この話を聞いたのが昨年の夏のこと。そのKがニューヨークから帰国したのです。


 久しぶりに再会したKは相変わらずの男ぶりで、すれ違う女たちが時おりチラチラとKのほうを見ているのがわかりました。
 慣れているとはいえ、同じ男でどうしてこうも不平等なのかとあらためて思ったものです。
 ニューヨークでの仕事は順調にいっているらしく、涼子も東京とNYでちいさなアパレルショップを展開しているとのことでした。仕事の話が一段落すると、自然に話題はKと涼子との夫婦関係に移っていきました。


「お互い別れるつもりはないんです。仕事は順調だし、二人とも親がうるさいし……」
 夕暮れ時のホテルのバーはまだ人もまばらで、私は久しぶりに飲む高価なシャンパンに心地よく酔いはじめていました。
「でもあれだろう? 涼子ちゃんにも他に彼氏くらいいるだろう?」
 私は内心の不安を押し隠しながらKに尋ねました。
「それはないと思いますね。だいいちあいつ仕事が忙しすぎてそんな時間ないはずですよ。しかもあいつああ見えて恋愛に関しては外人アレルギーだし」
「だとしたら、お前と出会って結婚してから3年ちかく、殆どしてないってことになるぞ」
「たぶんそうだと思いますよ」
 悪びれもせずそう言って面倒くさそうにグラスに口をつけるKを見ながら、私は思わず殴りつけたくなったほどでした。
 Kが言うには、涼子は自分のからだをもてあまして、時おり玩具を使っているというのです。あの涼子がまさかという気持ちと、ひとり寝のベッドのなかであの最高の肢体を悩ましくくねらす涼子の媚態を思い浮かべただけで、私は思わず生唾を飲み込みました。
「Yさんに相談なんですけど……」
 Kが口ごもりながら言ったその内容に、私は自分の耳を疑いました。
「……あいつと……付き合ってやってくれませんかね」


 Kからの申し出はこういうことでした。
 Kには現在20歳そこそこの女王様の愛人がいて、その女とは絶対に別れたくない。かといって妻の涼子と離婚する気はない。涼子の欲求不満を解消してやりたいとは思うが、どこの誰かわからない男に触れた手で自分に触れられると思うと耐えられない。
私はKが極度の潔癖症であることを思い出しました。
「面倒なのは嫌なんですよ。金はあるし、親ともうまくいってるし。トラブルは避けたいんです。Yさんだったら僕も知ってるし、涼子とそういう関係になってもいろいろ聞けるし、まあいいかなって」
「お前本気かよ……。だいたいおれなんか、涼子ちゃんのほうで嫌がるだろう?」
 私は本心を必死で押し隠しながら強がってみせました。
「それは大丈夫だと思います。あいつは僕とおなじでMなんすよ。自分ではノーマルだって言い張ってますけどね。いちど抱かれてしまったら、たぶん涼子のほうからYさんに溺れてくはずですよ。それは間違いないです」
 Kもまた、私の変態性欲をよく承知していました。私は長身で美脚の女王様タイプの若い女に目がないのです。
 Kは私の涼子にたいする気持ちを察していたようでした。
 私はKが本気で言っているとは信じられず、ただ呆然としていました。
「そのかわり……涼子とのセックスの一部始終を……ビデオで録画してほしいんです」
 Kの顔に冗談めいた素振りは微塵もありません。私は彼の被虐願望の根深さをみる思いでした。涼子が私に犯されるところを想像して、毎日オナニーをしているというのです。
「来週、伊豆の別荘に遊びにきてほしいんです。僕はひと芝居うって東京に戻ってますから、別荘には涼子ひとりしかいません。そのあとはお任せします」
「お任せしますって……何を?」
「だから、2日でも3日でも涼子を満足させてやってください。抵抗するようなら縛るなり何なりして無理やり自分のものにしてください」
「そんなこと……ムリだよ……」
「できますよYさんなら。そのかわりちゃんと録画すること忘れないでくださいね。隠しカメラの位置、教えますから」
 まるで仕事の打ち合わせのように淡々と話すKを見ながら、私は無性に喉が渇くのを止められませんでした。


 翌週の水曜から週末にかけて、私はKから言われたとおりに仕事を休むことにしました。といってもフリーランスのプランナーである私にとっては、まとまった仕事があるわけでなし、元から特に予定が入っていたわけではありませんでした。
 Kにはその後何度も電話をして本気かどうかを確認しましたが、「Yさんを騙すメリットがないでしょう」と一笑に付されるばかりでした。
(もしKが私をからかっているとしても……)
私には何ら失うものもなく、ただ暇な平日休みを伊豆の瀟洒な別荘で過ごす、というだけの話です。期待をするな、という心の声とは裏腹に、私は水曜の来るのが待ちきれず夜毎涼子の悩ましい裸身を思い浮かべながらベッドでのたうちまわりました。


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