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真っ赤なリース
【スポーツ 官能小説】

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第5章 救いの手-8

二野原勝彦が覚醒剤所持にて現行犯逮捕と言うビッグニュースの詳細をマスコミ各社は慌ただしく動く。テレビにはテロップにて速報が出る程だ。逮捕の経緯を逃さぬようメモを取る取材陣のノートは既に連続強姦強盗殺人事件のページはめくられ二野原逮捕の内容で埋め尽くされていた。

「現在ここ、千城県警本部にて取り調べが行われています。調書が取れ皆様にご報告出来るようになりましたらお知らせ致します。一先ずここで会見を終わりに致します。今回の件、お騒がせ致しまして大変申し訳ございませんでした。」
最後に深々と頭を下げ退室する田澤に二野原に対する質問の声が飛び交う。それらの声を背中で跳ね返し会見場を出る時、田澤は人知れずニヤリと笑った。

同席した県警本部長の桑原真澄と田澤はそのまま本部長室に向かった。中に入りドアを閉める。
「これか、君が大きな事件が起きるかも知れないと言ったのは。」
田澤はわざとらしくおどけてみせた。
「偶然ですよ、偶然。しかし何の捜査も努力もしていなければ、その偶然も起こりませんからね。」
あくまで偶然だと主張する田澤の言葉に桑田はあえて問いただす事はしなかった。二野原逮捕が朱音の不祥事を沈静化させるものだったなど本来はあってはならない事だからだ。ある意味隠蔽工作に当たる。それを理解したからこそ桑田はそれ以上問いただす事はしなかったのだ。

「何はともあれこれで立花の処分が懲戒免職だろうが謹慎、異動だろうがもう世間の興味は薄れて行く事でしょう。今日からワイドショーや週刊誌は二野原の件で一色になるはずです。奴らにとって事件究明やなんやらなど実際どうでもいいんですよ。より話題性のあるネタがあればそれでいい奴らです。どこの誰だか分からないような奴が起こした殺人事件や警察の不祥事のような地味なネタよりも誰もが知るビックネームのネタの方がオイシイと感じてるでしょうからね。これから小出しにして二野原の方を煽っていきますよ。フフフ、全くラッキーな偶然でしたよ。」
「君って奴は…」
呆れたような表情を浮かべた桑田だが、本来厳しく追及され信頼を著しく損なうところであった窮地を救ってくれた桑田には感謝の念しか浮かばなかった。

「では立花を僕に任せてもらってもよろしいでしょうか?」
「ああ。しっかりと再教育してやってくれ。」
「お任せ下さい。では二野原の取り調べに入りますのでこれで。」
「ああ。ご苦労さん。」
田澤は退室する間際、会見場を後にする時よりも遥かに嬉しそうにニヤッとしていたのであった。


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