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《夏休みは始まった》
【鬼畜 官能小説】

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〈戻れない夏〉-6




「真夏さん、また胸が大きくなってない?もう…羨ましいなあ〜」

「もうやだ、里奈ったら。大きさだったら麻衣の圧勝じゃない」

「大きけりゃ良いってもんじゃないわよ。そうよね、奈々未?」

「あー、それ酷い!私が胸の大きさ気にしてるって知ってるクセにぃ」


気のおけない仲間同士、互いの下着姿を見ては本音と建て前を混ぜた他愛ない話に花を咲かせる。
その騒がしさを維持したまま四人は階段を下りて左手に曲がり、迷わず露天風呂の扉を開けてなだれ込んだ。


「ん〜ッ!爽やかないい風〜」

「オホホホ!一番風呂は私が頂きましてよ!」

「あら、抜け駆けはいけませんわ、麻衣お姉様」

「お二人ともお転婆が過ぎましてよ?走ったりしたら婆やに叱られますわ」


入って直ぐの脱衣場で下着まで脱ぎ捨てると、四人は白いタオル一丁でコンクリートで作られた階段を駆け降りはじめる。

と、その階段の日影の部分に黒く動く物体を見つけた。
それは別に珍しくもない一匹のダンゴ虫だった。


『なにコレ?まさかテレビでやってたダイオウグソ…ダイグソ……なんとかって虫?』

『ちょっと里奈ったらヤダ〜。変なトコで名前切るからオカシなコトになってるじゃないの』

『まったくもう……大王具足虫(ダイオウグソクムシ)は海に棲む生き物でしょ?コレはダンゴ虫よ』

『私達の裸を拝めるなんて、このダンゴ虫は幸せ者ねえ?さあ、露天風呂が待ってるわよぉ!』


小さな虫に悲鳴をあげるでもなく、四人はキャッキャッと笑いながら駆け降りる。
当然、敷地外からの視界を遮るべく竹を組んだ塀と屋根が続いており、はしゃぐ四人の疾走を捉える者は存在しない。



「わ〜、可愛い!木の桶なんてオシャレぇ!」

「てか、ここからの景色も凄くない?スマホ持ってくれば良かったかな?」

「ダメダメ。ラスト一個のスマホなんだから。落として水没させたらアウトでしょ?」

「ねえ、この旅館選んで正解じゃない?これで夕食がサイコーだったら完璧でしょ?」


本来なら室内浴場で髪や身体を洗ってから露天風呂に入るのがマナーである。
だが、客人は自分達だけなんだいう解放感に浸っている四人の頭の中には、そんな“基本”すら浮かばなかった。

頭上には空を覆わんばかりの緑の枝葉。
ビル街のように立ち並ぶ荘厳な岩石。
白波を立てて流れる渓流。草木の薫りを含んだ涼風。

湯船に浸かりながら眺める光景は出発前に想い描いていたものを上回る美しさで、正に絶景の直中に我が身を置いているという至福の時に四人は暫し酔いしれた………。




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