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5センチの景色
【女性向け 官能小説】

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-3


「月曜日から、残業だよ」
7時になっても帰る気配のないこの部は
みんながみんなワーカホリックだと思う。

「高橋、その資料が終わったら帰って良いぞ」
一見優しく聞こえるそのセリフも
『その資料』の多さを知ったら優しくは聞こえない。

『その資料』が終わらないんだってば!

ようやく終わって時間を確認すればすでに9時を過ぎていて
野口さんに資料を渡して帰ろうとするけど
他の方々はいまだに帰る気配もなく

「あの・・・」
と野口さんに声をかけたら
「お疲れ」
と、こちらも見ないで先に言われた。

何か、手伝いましょうか、って言おうとしたんだけど。
そんな私を見て、苦笑いをしながら山崎さんがそっとドアを指差した。

帰って良いよって事だ。

「お先に失礼します」

この人たちは、会社のエリートで
羨望のまなざしで、やっかまれることも多い。
けど、中に入って分かることは、彼らは
社内のだれよりも、それ以上に仕事をしているって事だ。

私はこの部に居ていいんだろうか?

毎日のように降っては湧くその疑問に
「夕飯どうしよう」
まずは直面の問題を口に出して呟いてみる。

「あ。今帰りか?」

上から下りて来たエレベーターに偶然乗っていたのは安達さんで
何百といるこのビルの社員に、1日2回も偶然に会うなんて
本当にビックリした。

数人乗っていたそこに、小さく頭を下げて
安達さんとは逆の端の方に乗り込んだ。





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