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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈微笑みの裏側〉-3

『意味が分からないだろ?こんな意味が通じない言葉を“それらしくする”のは大変だったよ。ねえ、こんなのが契約書として効力があると思うかい?』

「……そ…そうです…よね……」







何度読んでみても、やっぱり花恋には意味が分からなかった。

きっと裕太が読んだとしても意味など分からないだろうし、もし内容を聞かれたとしたら、孝明ならば上手いこと《嘘》をついてくれるだろう。


『まだ不安なのかい?ほら、これでコッチが本物って分かってくれるよね?』

「………」


先ほど机から取り出した書類と同じものに、一人の女性の名前が書いてあった。
日付は一年くらい前のもので、捺印の部分には拇印が捺してある。


『この娘は二ヶ月契約でさ、作品を三本作ったんだ。ほら、他にもまだ有るんだ』


束で出された書類には、その全てに女性のサインが書かれていた。
それらが捲られていくにつれて花恋の不安は薄れていき、この〈偽物〉に名前を書くだけで悩み事から逃れられるという思いだけが強くなっていく。


『ねえ花恋ちゃん、騙して契約させるなら、最初からしてると思わないかい?それに俺は前に約束したよ、『もう撮影は無い』ってね?』

「ッ……!!!」


先週の撮影が終わった後、確かに孝明はもう撮影は無いと言っていた。
それに騙すのが目的なら、こんな回りくどい真似はしないだろう。


「ご…ごめんなさい……なんかこの紙を見たら、急に怖くなっちゃって……」

『それは仕方ないさ。俺が花恋ちゃんと同じ立場だったら、きっと同じように思ったろうし』


孝明に差し出されたボールペンを受け取ると、花恋は緊張した面持ちで名前を書き込み、そして右手の人差し指に朱肉を着けて拇印を捺した。

まだ恐怖は残っている。
そして後悔も生まれている。
だが、先週も同じように思い、そしてそれらは杞憂でしかなかった。


(私は……今度こそ…これで……)


この契約書を兄弟に突きつけてやれば、もう何もされる事はない。
これから孝明と二人で自宅に向かい、確かに契約したと言ってやれば、明日からは《普通の生活》に戻れる。

花恋はサインと捺印という重大な行為をしたのは「正しかった」と自分に言い聞かせた。
何度も何度も、言い聞かせていた……。



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