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調教学園寮夜話
【学園物 官能小説】

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第12話『史性寮祭』-4

「全然違うような気がしたとしても、『学園』と幼年学校って、本質的には違わない。 『教育機関』の本質が『生徒のためを思っていること』だとしたら、『学園』と『学園』の関係者っていうのは……教育者だなって……うん……私は思ってる。 ていうか、思えるようになった。 Aを4年もやってると、やりたくないこともいっぱいあって……後輩に厳しくしたら、その100倍キツいペナルティが待ってるのに、適当にするわけにもいかないんだよね。 できれば何もしたくない。 でも、そんなわけにはいかない。 結局葛藤して、色々やってきたし、これからもそうするんだろうなって思う。 Aグループっていっても……最上級生が偉いっていってもね。 昔は『いいなぁ、早くAになりたいなぁ』って思ってたんだけど……なってみたらみたで、全然思ってたようなポジションなんかじゃ……うーん、これ以上いうのはカッコ悪すぎだね……この辺にしとく」

支配する側にいるのも真実であり、後輩を大切に想っていることも嘘ではなく、かといって馴合うつもりはないが、しっかり『史性寮』に馴染んで欲しい……結局のところ、Aグループ生は様々な混沌たる想を抱え、新入生同様日々試行錯誤しつづける存在だ。 寮内で自由に、好き勝手できる存在なのは一面であり、自由にはもっと大きな責任と義務が付帯する。 Aグループが『楽』だなんて、とんでもない。 誰もが一元的に判断、評価を下せるほどには、この世界は単純じゃない。

「で、私ですらそうなんだから……教官たちなんて比べものにならないよね、常識的にいって、しんどさっていうか、なったときのギャップっていうか、全部含めて背負ってるものの大きさは桁が違う……ふふっ」

 苦笑しつつ、続ける。

「……みんなしんどい想いをして、私達に関わってくれてるなんて当たり前の事くらい……考えたらすぐわかることなんだけど……長い間、全然気づかなかったなぁ……。 だから私はダメなんだね。 こんな簡単なことに、5年近く気づけないようなぼんくらさんだから、いまだに卒業できないんだろうなぁ……。 でも、誰も教えてくれなかったし、毎日必死で、余裕なんてこれっぽっちもなかったから、ホントに気づけなかったんだよねぇ……ふう」

 溜息1つ。 ただし疲れた表情ではなく、むしろサバサバした様子だった。 

「で、いままでが前振り。 ここから本論! みんなには『余裕』をもって生きて欲しい。 同期、先輩、教官、色々。 みんな何かのご縁だから、せっかくの関係を緊張して過ごすんじゃ勿体ないぞ。 どうにかして楽しんで、少しでも余裕が出てくれば……そうすれば世界は変わる。 ほんっのちょっと、ちょっぴりの余裕で、ガラッと一変しちゃうんだから。 今日の史性祭も含め、ちょっとしたことを楽しんで、心を嫌な気持ちで埋め無いように、少しのスペースを大事にしながら……これからもよろしくお願いね」

 【A5番】はステージ上にいる他のAグループ生全員と握手した。 そして、全員一列に並び、

「せーのっ」

 ニッコリ笑って音頭をとる。 

「「みんな、今日は1日、本当にありがとうございました〜!」」
 
 一言一句。 一挙手一投足。 完璧に揃った最上級生のお辞儀。 パチパチパチ……! これまで何度もあがった拍手が、これまでと違って歓声は一切なかったけれど、大きさでは今まで以上に一際大きくステージに響く。 と、フッと照明が暗転し、再び点灯した時には、Aグループ生はみんな食堂からいなくなっていた。

 パチパチパチ……パチパチ……パチ。

 しばらく拍手が続き、徐々にまばらになり、収束する。 すでに寮祭を経験しているBグループ生が立ち上がり、食堂の復元、舞台の撤収に取り掛かる。 Aグループ生の挨拶でポカンとしていたCグループ生も、つられるように立ち上がり、見様見真似で片付けにかかった。

ほとんどの後輩にとってすれば、先刻、眼前の先輩たちから受けた印象は、これまで築いてきたイメージと全く違っていた。 なにしろ普段のAグループ生といえば、何かにつけて後輩に難癖をつけ、毎朝の排泄物チェックに始まり、入浴就寝に至るまで管理監督する存在だ。 上級生とは『躾と称して体罰、放置、調教を躊躇わない、絶対的な支配階級』とばかり思っていた新入生にとって、いきなり懐を披露するような物言いは、困惑以外に何物でもない。 というか、寧ろ話の裏を深読みしてしまい、逆に警戒している生徒の方が多いくらいだった。 物分りがいい生徒にしても『みんないい人』という意見に対し、素直に首肯できるわけもない。

それでも、寮祭という特殊な1日の最後に投げかけられたメッセージが、寮生たちに小さな波紋を起こしたことは事実だろう。 小さな波が共振して大波に至るものもいれば、さざ波で終わるものもいる。 片付ける寮生の数人は、手を動かしながらも上の空で、何かを必死に考えるように、虚空の1点を凝視していた。

以上、年間通じた史性寮で、もっとも笑顔が溢れる1日の一コマである。


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