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「淫らにひらく時」
【若奥さん 官能小説】

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「淫らにひらく時」-9

「ねえ・・私も描いてくれない?」

「似顔絵?」

「違うわよ、SM画。」

「今から?」

「無理?」

「無理じゃないけど・・・」

「今、描いてもらいたいの。この次っていうと・・・きっと、ためらっちゃう。」


チクチクするような本物の縄で体中を縛られた。

「これは亀甲縛りと言って、一番簡単で一番美しい代表的な方法です。」

縄の目が亀の甲羅の紋様みたいに見えるから「亀甲縛り」だそうだ。
編み込みが複雑に絡み、重心が一点に掛からず全体に掛かるから体力的な負担も比較的少ないという。
縛り方も意外に簡単で覚えてしまえばひとりでも縛る事ができるとも言った。
体を絞めつけた縄は股間を通して手首を後ろ手に束ねている。
少し動かしてみると股間を擦り付ける縄がキリリと絞まって危なげな快楽が滲み出るような感覚を覚える。

SMを語る男の九分九厘は実は未経験者だとネットの中の誰かが言っていた事を思い出した。
中には確かに「それはない」と思えるような持論や経験談を一生懸命に諭す人もいるけど、真偽はともかくみんなそれほど研究しているのだ。
そこは実際にこうして縛られてみて、初めて感じる感覚のように思えた。

例えば、こうして手首を動かすとお尻の穴とクリトリスが同時に刺激される実感のような・・・
この人は本当に手際よく、本当に慣れている感じがしたけど、女を描くために縛るのだから、快楽の趣旨がちょっと違うようにも思えた。
描く事に性的快楽を覚えたりするのかも知れない。
ただ、股間を絞め上げた粗縄が数々の女の同じ場所を締め上げてきたと思うとちょっと複雑だったけど、自分で縛ってくれといったのだから、この際贅沢も言ってられない。

「どうすればいいのかしら?言って。」

「楽に自然にしてくれればいいです。横になってもいいし、座ってもいい。椅子に掛けますか?」

大股拡げて、それらしく何かの真似をしてみたかったけど、やめておいた。
用意してくれた椅子に浅く腰を据えて、ちょっと小首を傾げてみせた。
脚は揃えて床の上にそっと這わせる。

細い針金を取り出して、それで乳首をつついたり、どこかに挿し込まれたりするのかと思えば、指先でくねくねと曲げながら構図を測り出した。
縦に横に三分ぐらいそれは続いて、それから猛烈な速さで描き出した。
細い木炭がコリコリ滑る音が聴こえる。
爪先でパンパン叩いたり、指でなすりつけたり、時折顔を上げて私を見るがほとんど画板から目を離さない。
モデルがいらないわけがリアルに分かった。


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