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「淫らにひらく時」
【若奥さん 官能小説】

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「淫らにひらく時」-1

 目覚めると薄暗い部屋の中にいた
 不安になって母の姿を探す
 明かりの漏れる襖を開くと下着姿の母は男の傍らで身を起こした
 その時の母のやさしい顔を思い出す

曖昧な記憶を今でも思い起こすことがある。
記憶は曖昧なまま私と共に成長して、その当時は分からなかった記憶の意味を知る。
私はその頃、いくつぐらいでどこに住んでいたのかさえ、まったく憶えてはいなかった。
男の方はよく知った人で、私もいくぶんその人に懐いていたような気もする。
若い男だったか、あるいは年配の人だったのか・・・その辺りは全く記憶にない。


肩に回された手のひらが、ゆっくりと腕にかけて撫で下ろされた。
平たい胸に耳をあてて、鼓動を聴いていた私は硬く尖った男の乳首に舌先を滑らせる。

「時間は大丈夫?」

「ええ、もうちょっとぐらい・・・」

なんとも間の抜けた、曖昧な返事を返したものだと自分でも思う。
「もう飽きたから出ようよ」という意味なのか、「まだ一緒にいて、平気なのか」という意味なのか、判断が難しかったからだ。
ホテルのベッドの上。素っ裸のまま、ただ横たわっている。

男は肩に回した腕で私の背中を支え、その腕の中にすっぽり包みこむように右手で脇腹から乳房にかけて撫でまわす。
彼のペニスはまだ、膨らみを保ってはいたけど「勃起」といえる硬さはすでに失われていた。
体を滑りこませるように私はそれを口に含み、その剥き出しになった部分を口膣の粘膜に擦り合わせる。
まだ残っていたのか、渋みにも似たひと雫が口の中に滑り込んだ。
お尻をこちらに向けろと促されて、恥じらいを隠しながら彼の顔を跨いでみせた。
少なからず、今夜初めて会った彼の前では大胆で淫乱な女を演じたかったのだ。

私は今夜、このために自分宛の同窓会の通知を出した。
ネットのSNSで知り合った彼と初めて会う、その今夜のために・・・

後ろから拡げられた花芯を舌先で掬いとられ、唇に弄ばれる。
体を繋ぎ合う前に試された、チリチリとした感覚はいくぶん弱まってはいたけど、それでもそれに反応して自然と腰が揺れる。
口膣の中の硬さは少し膨らみを取り戻してくる。
前から咥え込むのとこうして逆さに咥え込むのとでは、ずいぶん形が違って感じられた。
それが機能的にどう作用するのか知らないけど口膣に膨張を感じながら、思いつきでそこに垂れ下がる二つの膨らみを手のひらでマッサージしてみた。


室に隣接した化粧台で顔を直し、口紅を引いて、またティッシュを咥える。
ほどよく、自然に定着した風を装うためだった。
鏡の中の三十女はどこか疲れた表情を隠せない。伺うようにそっと覗き込むと、あえていうならば目だった。
目の下のかすかな弛みがひどく落ち窪んでみえた。

食事して、ちょっと飲むぐらい・・・それならそれで構わなかったけど、少しは期待して出てきたのだった。
今さら出会い系もないんだろうけど、つまるところお互いにセックスの相手を探すとしたら、もっと簡潔なやりとりで良かったんじゃないだろうか?
SNSという方法を通じていろんな人と交信して、ゆっくり時間かけて、結局適当な人と会ってみたのだ。
それはただ、よく知らない男と「乱れたセックス」をしてみたかったというだけ。私たちはお互いに連絡先も名前も知らないままでいるのだ。



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