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貧困娼年の憂鬱
【ショタ 官能小説】

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The depression of a poor boy-3



カレーパン。油で揚げてあるパン。中にカレーが入っている。前に食べたのいつだったけ?ああ、こんなに美味しい食べ物だったけ。ボクはカレーが大好き。給食でも一番好き。これはコーヒー牛乳。栄養は白い牛乳の方があるんだろうけど、こっちの方が甘くって好きっ。このパン、中に甘いあんこが入ってる。喉が詰まっちゃう。慌てないでボク。いつか月曜日の給食であんまり急いで食べて吐いちゃった事あるじゃない。これ、オジサンの夕食だったのかも。これ食べちゃったらオジサンの夕ご飯なくなっちゃうんだろうなあ。それ、迷惑だよね。ママだったら絶対「ソンガイバイショウ」って騒ぐもの。いくら「食べていい」って言っても礼儀っての欠かしちゃいけないってママがいつもいつも言うし、何かお返ししなきゃいけない。でもボクは何も持ってない。お金が無くて、物がない時。それは働けばいいって先生が言ってた。そう、その人の役に立てばいいの。何か困ってることがあればキョーリョクしたりジョリョクしたりすればいい。だから、食べ終わったら働こう。オジサンのために何かしてあげよう。



男は築山の土管の中に入っていた。

トンネルを夏の夜風が吹き抜け、思いがけず快適な空間にビックリする。いいじゃない、これ。
足を伸ばしてくつろいでいると、土管の入り口に立ち尽くす少年に気が付いた。もうちゃんと服を身につけている。

「オジサン、中に、入っても、いい、ですか?」

話し慣れていないというより会話自体あまりしてないんじゃないかな、と男は思う。あまりにもたどたどしい言葉は水の中で喋っているみたいだ。
不揃いな長髪はまだ濡れて水銀灯の光に揺れていた。男は少年の髪の毛が「天使の輪」を作るぐらい艶やかな事に気付く。

「オジサンじゃない、お兄さんだ」

半分冗談めかした男の言葉に、少年はうろたえる。
その不器用さが男の気持ちを和らげた。

「ごめんなさいっ、お兄さんっ。あの、ボクお礼がしたいんです」

「ああ。いいから入りなよ。べつに俺の部屋じゃないんだから」

少年はかがんで膝を折る。その鳶色の綺麗な肌の肘と膝だけが荒れている。それを見て男は少年の境遇を何となく理解した。
飢えと彷徨、夜の水浴。それが指し示すのは「貧しさ」。そしてこの儚そうな表情は誰にも愛されたことのない証明でしかない。
男はそれが痛いほど解る。かつて自分がそうだったから。

「いらない子供」の烙印。

コンクリートの土管は意外と広い。直径で1.2メートルぐらいだろうか。少年はちょっと屈んだだけで楽に入ってくる。身長はそう、140センチちょっとかな。
少年にとってこんな事は初めての経験なのだろう。男の顔を直視することが出来ずに視線を彷徨わせ、瞳を揺らしている。少年が放っている悪臭は服のせいだろう。その中にかすかに少年特有のミルクのような甘い香りが漂っていることに男は気付いた。

この香り、悪くない。

「お礼って、君、どうするの。『ごちそうさまでした』って言うだけじゃん」

「あの、いえ、そうじゃなくて。何か役に立つことがあれば、その、しますっ」

「んー、そうっ」

瞬間、男の心に悪しき欲望の炎が灯る。

こういうのも、いいじゃない?俺だってここしばらくご無沙汰なんだから。それに初めての味ってのは試してみたいものさ。食わず嫌いで美味しい物を食べないのは損だしね。こんな子供だってゲイのタチを慰めるくらいのものは持っているんだし、別に減る物でもない。

男は10代半ばから始まった性体験を思い出す。もしこれを味見するなら文句なく最低年齢のスコアになる。

「でも、まず人のために働く前に、人には礼儀ってものがあるんだよね」

「はっ、はいっ」

「君、臭いの」

「えっ……ええっ?」少年はシャツの襟元を引き寄せてそれを嗅ぐ。

「そのTシャツにパンツ。何日洗ってないの?ひょっとすると一ヶ月、いや、もっとかな?」

少年の表情に縦線が入る。ねっとりしたデニムのパンツをつまみ、Tシャツの裾を掴んで困惑した表情を浮かべ、助けを求めるように男の表情を窺った。

そうだよね、困っちゃうよね。着替えなんかないんだから。答えはねえ、ひとつしかないんだよ?

「それ、脱いじゃって」

「えっ…………」

「この中、臭くなるから。服脱いでその雑巾みたいなの外に出して」

少年は行き詰まったように当惑したまま頬を赤らめる。
そんな恥じらいがとっても新鮮なんだよ、少年。

少年は躊躇いながらTシャツをめくり上げて首から抜いた。
そして汚れたデニムのパンツのボタンを外して腰から下ろす。
そのふたつを丁寧に折りたたむと、そっと土管の外に置いた。
こんな雑巾みたいな服でも、少年にとっては大切な一張羅なのだろう。

「それも、汚いじゃん。臭いのは全部、外」

グレイのよれたボクサーパンツに手をかけた少年はその動きを止める。

「………は、ずかしいっ、ですっ」

「男同士、何が恥ずいのよ。君、水泳の時間に更衣室でいちいち恥ずかしがってるの?」

その言葉を聞いた少年は妙に納得したのか、尻を土管のコンクリートにつけてボクサーパンツを足から抜き取った。そしてまた畳んで土管の外。

水浴びしたからだろう。さっきまでの悪臭は嘘のように消え、代わりに少年特有の芳香が立ち上る。そうそう嗅いだことのない匂い。悪くない。


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