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貧困娼年の憂鬱
【ショタ 官能小説】

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The depression of a poor boy-2



その男はふて腐れていた。

解雇を言い渡されたのは三日前の事。
連絡もなしに勤怠する事は数えきれず。ガードマンの現場はいつでも穴が空き、下請けである会社はただただ謝罪を繰り返しヘルプの職員を叩き起こして来た。
職場の先輩に当たる上司はそれでも男をかばってくれたが、とうとう限界がやってきた。

同時にステディに部屋を追い出される。そう、俺よりいい男なんてこの世にはいっぱいいる。いくらゲイのタチが珍しいからって、世の中は広い。
24時間営業のネットカフェにもそうそう居られるものじゃない。男は田舎育ちでもともと狭苦しい場所が苦手だった。
たまには外でもいい。やった事はないけれど寒い季節ならまだしもこんな夏であれば結構快適かも知れない。
男がそんな気持ちで足を踏み入れたのは小さな児童公園だった。

公園は檜葉の木と植え込みの低木樹が取り囲まれ、こじんまりとしたホールのような案配になっていて雑多な視線から隠されている。汚いけれどトイレもあるし、水道もある。

それに中央にある築山にはコンクリートの土管があり、人目を気にしなければ雨宿りだって出来るし、なんだったら足を伸ばして眠ることだって出来るじゃないか。
男は錆び付いたブランコのひとつに座り、ゆらゆらと揺れた。
公園にある灯りは水銀灯がひとつだけ。目隠しの樹木の隙間から街の灯りが透けて見える。
これだけ人の居ない静かな場所に来るのは郷里の田舎を飛び出して以来な事に男は気付いた。

たまにはいいよな、こんなのも。
男はポケットからKOOLを一本取り出し、ジッポーで火を点ける。
煙は夏の夜風に浮かび、たちまち流れていった。



その少年に気付いたのは水音を聞いたからだった。

トイレの裏手に回ってみると、年の頃は10歳か12歳ぐらいの小学生らしい少年が全裸になって水道で身体を洗っている。

いくら夏とはいえ、夜の公園の水飲み場で真っ裸になって身体を洗うなんて尋常じゃない。
家で両親と喧嘩して意地になっているのかも知れない。夏休みの宿題をさぼっているのか、それとも塾に通うのが嫌になったのか。親にさせられている習い事の拒否、一学期の成績の通知表。
今時の子供ならもっとややこしい理由があるのかも知れない。
その少年が不揃いな濡れた髪を掻き上げて顔を露わにした時、男は眼を細めた。

けっこう美形じゃん?

肌の色は鳶色。痩せこけてはいるけれどプロポーションは悪くない。
生まれつきなのだろう、肌がきめ細かで丸みを帯び、ちょっと見には女の子のようだ。

その横顔は端正。気弱そうな眉は欠点としても、その瞳は白眼が勝つ三白眼だけど、曇りのないガラス玉のように澄んで、嘘みたいに長い睫毛がそれを美しく縁取っている。
男がそそられたのはとりわけその唇だった。
薄く淡い桜色をした唇は女が羨むぐらいに完璧な形をしていて、ちょっと妖艶なぐらい。
首筋は折れてしまいそうな程に細く、腹は子供らしく割れていた。

男が近づくと少年はビクッと跳び上がり、慌ててそばにあったボロ雑巾のようなTシャツで股間を隠す。思わず郷愁を誘う可愛らしい皮を被った陰茎を男は見逃さなかった。
恥ずかしいのか、俯いたまま立ち尽くす少年に男は歩み寄る。

男と少年はどのくらいそうやって凍り付いていただろう。

車の音はなく、街場の喧噪も聞こえない。炊事やテレビ、話し声などの生活の音も聞こえない。
その静寂を破ったのは少年の腹から聞こえた可愛らしい生理の音色だった。


「きゅうっ」


少年は顔を真っ赤に染めて男から後ずさる。
男は笑みを浮かべて手に持ったコンビニの袋を持ち上げた。

「ろくなものないけど、食べる?」

再び少年の胃袋が立てる音が響き渡った。
少年はおろおろと男を見上げて押し黙ったまま立ち尽くす。

「いいよ、これ、ここに置いとくから」

男はコンビニの袋を足下に置くと、向かいのベンチの方に歩き去る。
少年はボロ雑巾のような黒いTシャツを抱えたまま袋を手に取った。



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