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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第32話『漏るウマ、放るウマ』-2

 A教会。 教会は、教会があがめる『聖母女性が処女の時に妊娠した』『教会に寄付すれば死後の安住が保証される』に代表される絵空事で満ちている。 それでも信仰の長きにわたる歴史によって、堂内は厳かな重みに満ちていた。 しかし、そんな暗黙の了解に裏打ちされた厳かさなど、限界を超えた便意に苛まれるウマの前では塵芥(ちりあくた)に過ぎない。 オマルから漂う便の残滓を嗅ぎながら、5頭のウマが堂内を爪先立ちで歩き回る。 オマルは入口からもっとも離れた『告戒室』の隣に置かれているのだが、どのウマも入り口付近で匂いを嗅ぐばかりで、中々オマルに辿り着けない。 そのうちに、しきりにお腹をキュルキュル鳴らしていた1頭が立ち止ったと思うと、ブリッ、ブピッ、ブビュルブブッ、堂の中央でありったけをぶちまけた。 たちまち周囲を覆う猛烈な悪臭、真っ白な液体の中央にこんもりそびえる宿便が匂いの源である。 こうなってはオマルの位置を匂いで探るなど不可能だ。 他4頭の裸馬も匂いを嗅ぐが、結局最初の1頭が漏らした便に集まってくる。 我慢の限界を超えたものから、その場で立ったまま股座を下ろす排便体勢をとり、ブボッ、ブボボッ、順次勢いよく脱糞し、108つの鐘に混じって激しい放屁が堂内に響いた。

 寺は死後の世界を吹聴し、死後に暮らす名前を付けることに法外な金銭を要求するという、功徳の対極をなしてきた。 もともと寺に縁がない国柄ではあるが、信教の自由を標榜してきたため、全国に5か所ほど御寺はある。

 B寺。 御堂に並んだ仏像と、供えられた線香に蝋燭。 眺めと薫りは奥ゆかしいものの、目隠しをつけ、肛門から牛乳が溢れかけている5頭の裸馬たちには、寺特有の風情を味わう余裕などない。 ウマ用のオマルは賽銭箱の隣に置いてあり、匂いを頼りに三々五々集まってきた。 前脚を掻いたり、後ろ足で木板を蹴ったりして辺りを探ると、ちょうど手ごろな箱がある。 最初に決断を下した裸馬は、おそるおそる片脚をあげ、賽銭箱に右脚を掻ける。 ウマ特有の、壁にマーキングする際に躾けられた排泄ポーズ――そこは『賽銭箱』であって『オマル』でないことなど、誰も教えてはくれない。 裸馬は斜め下、つまり賽銭箱の中心を向けて、ブボボボボッ、大量の浣腸液、そして溜まった便秘ウンチを排泄した。 あとは教会同様、最初の1頭に続いて次々に脱糞が連鎖する。 ブビッ、ブボッ、ブバッ……最後の1頭が排泄を終えたあとには、銭が零れ落ちるべき隙間が有機物で埋まった賽銭箱が、腐臭をまき散らしながら佇んでいた。

 モスクは、像や絵画が一切ない代わりに幾何学模様の壁と敷き詰められた繊細な絨毯が、清々しい空気を醸している。 だがしかし、内実は少女に爆弾を抱かせ、無差別に人混みに分け入らせて爆発させた、悍ましさの集大成だ。 預言者を信じないものを皆殺しにする理不尽さは、宗教が標榜する『人類の幸福』とどのようにして繋がっているんだろうか?

 Cジャーミー(モスクの中の寺院部分のこと)。 ユーラシア大陸南部の都市がある方角に作られたミフラーブ(窪み)の隣と、室内に設けられたウドゥー(泉)の隣に、2つオマルが置かれている。 108つの鐘が鳴る中、モスク内で排泄を済ますべく彷徨う5頭の裸馬は、比較的小さいモスクだったため、正確に匂いの源たるオマルを嗅ぎ当てた。 ただし、3頭が実際に排泄したのは、オマルの隣にあるミフラーブだ。 高さといい深さといい、立ったままウンチを落とすにはちょうどいい位置。 勢いよく床を直撃した牛乳がしぶいて周囲の絨毯を純白に染めたのち、茶褐色の塊が、ボトボトボトッ、ミフラーブの底にフルヘッヘンドした。 残り2頭は、そっと爪先をウドゥーにつける。 深さは一番深いところで腰ほどになり、下半身を水につけた裸馬たちは気持ちよさそうに体を震わせた。 普段から川で脱糞を躾けられたたまものだ。 ウマは、水に浸かった上での排泄を躊躇わない。 2頭の尻から真っ白な牛乳が溢れて水に混じる様子は、あたかも工場の煙のよう。 或は間欠泉から湧く熱水のように、水の中に靄をつくる。 最後は、ブピッ、水の中でくぐもった破裂音を伴った脱糞。 細切れになった便塊はしばらく水面に浮かんでいたが、やがて茶色い液体へと溶けていった。 澄んだ泉を茶色と白に染めた2頭の裸馬は、ウドゥーのことがオマルだと勘違いしているため、自分が神聖とされる水を汚したことに対し、悔いも恥じらいも感じていない。 ただ浣腸液をすべて排泄できた解放感と下半身を沐浴した気持ちの良さから、足取りかるく堂内をつま先だちで歩き回る。

 他にも『神々の代弁者の墓』『神々の証人の家』『神々の家族の神殿』など、山ほどある宗教施設は、この日に限り、原則すべてが裸馬のトイレとして解放される。 動物の身体とヒトの上半身をもつ神像も、かつての指導者を称えた銅像も、石灰石を繰り抜いてつくった純白な石像も、みな裸馬によって尿と便で飾られる。 信仰の対象だった作品群が汚される様はっするメッセージは、自分たちが信仰した施設であっても、支配体制が変わった現在は『ウマの便器』以上の特別な意味はもちえない、というものだ。
 
 無邪気に教会で脱糞するウマたち。 彼女らのケツ穴が全国ネットで放映されるようになってからこちら、宗教が原因で生じる諍いはめっきり減った。 神? 預言者? ウマの便器如きのために目くじらを立てることもない――多くの市民に新しく根づいた感情の1つ、といえるかもしれない。



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