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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第32話『漏るウマ、放るウマ』-1


 12月○日。

 2年間一緒にすごしたクラスのみんながサプライズで『お別れ会』を開いてくれた。 年度途中でクラスから誰かが欠けるっていうのは、引っ越し以外じゃ初めてらしい。 進学するにしろ、就職するにしろ、普通は学期終わりにお別れだから、あたしは珍しいケースなわけで。

 『元気でね』とか『私達ずっと友達だよ』とか、ありきたりな一言メッセージが集まった寄せ書きの色紙。 友達1人1人が写った学校行事の写真を綴じたアルバム。 最初『お別れ会』って聞いたときは『はぁ? 今更?』と白けたけど、いざみんなを前にすると、思ったよりジンとして、ちょっぴり涙ぐんじゃったりして。 どんな形にしろ、自分のためにエネルギーを使ってくれたわけで、そういう意味では素直に嬉しかったです。 あたしも『早く立派なウマになれるよう、頑張ります!』と、普通に挨拶した。 本当なら『こんな糞みたな社会に進学するなんてアホらしい』みたいに、本音と毒をないまぜにしてもよかったんだけど、立つ鳥跡を濁さずっていうし、沈黙は金という至言もある。

 放課後、待ち合わせてヨアンと2人して学校から帰った。 途中、どっちがいうでもなく、寄り道してセントラルパークへ行った。 軍が仮設で軍馬関連の施設を最初につくった公園だ。 思えば、いつも2人して軍馬を見にきていた。 最初はヨアンに誘われて渋々だったのが、途中からはあたしの方が乗り気になってたと思う。 でも、ヨアンに誘われて見に来るっていう一歩がなかったら、今のあたしは無かっただろう。 誘われたのがヨアンじゃなければ、放課後に2人で寄り道なんてしなかったろうし。

 あたしは、多分ヨアンの事が好きだ。 今まではぼんやりと、あたし達親友だな、同性として分かり合えてるな、なんて思ってたけど、多分それだけじゃないと思う。 だって、他の女子が着替えてるのを見ても全然どうでもいいのに、ヨアンの下着を見ただけで胸が痛くなるし、トイレから出る所でヨアンに会っちゃうと、恥ずかしすぎて顔をあげていられない。 こういうのって、普通の友達じゃ説明できない……いや、他でもない、あたしのことはあたしが一番分かってる。 もしかしたら、あたしがウマになりたいのも、とどのつまりはヨアンのせいかも。 『ウマの方が未来がある』とか『一々法律で縛られるなんてやってられない』とか、散々理屈をつけてみたけど、結局ヨアンを背中に乗せたい――っていうか、ヨアンに乗りこなしてもらいたいだけ、なのかもしれない。 まあ、100%ヨアンのせいっていうのも無茶があるよ。 だけど、ヨアンがウマが好きだからあたしがウマになりたいっていうのが、無関係っていうのも嘘になっちゃうんだよね……上手く言えないんだけどね。

 公園から先、ヨアンの家とは方向が違う。 別れる時、今まで見たことない真剣な顔で、ヨアンがあたしの顔を睨んでた。 正直、ちょっぴり期待してた。 あたしが嬉しいこと、聞きたい事をヨアンから言ってくれないかなって……ヨアンって男の子っぽいから、こういう時に気を利かしてくれたらいいなって思って、あたしも負けじと睨んでみた。 

 でも。 結局何も言ってくれなかった。 あたしの気持ち、ヨアンには伝わってなかったのかな……? そりゃそうだよね、あたしだって自分がよくわかんないんだから、ヨアンに分かるわけないのかな……。 あーあ、どうせならあたしから言えばよかったなぁ……。 いや、何ていいたいのかって聞かれたら、実は頭の中がこんがらがっててよくわかんないでいるんだけど……ふう。 とにかく人生儘ならない。 モヤモヤしたままバイバイしたせいで、頭からヨアンが離れてくれないよ、もう……。

 下でお母さんが呼んでる。 お母さん、お姉ちゃんとあたしの3人で、家族水入らずのお別れパーティー。 特製シフォンケーキの甘い匂い……こうなったら美味しいモノに気分を紛らわせてもらうしか! シフォンケーキ、使った配給ポイントからして特大サイズなのは間違いない。『露馬』を応援するって言ってくれたお母さんのためにも、残さず完食するつもり。

 
 ……。

『棄教令』

 虚実ないまぜで人倫を惑わし、現代科学との間に矛盾をもつ一神教、唯神教の類は、是を禁止する。 宗教施設の文化財的価値は、芸術作品として優れたものを除いて、是を評価しない。 一定期間の棄教期間の間は宗教施設を認めるが、順次一般集会施設等への転用を促す。


 ……。



『漏るウマ、放(ひ)るウマ』

 旧歴において年が変わるとされた『旧歴大晦日』、宗教施設へ裸馬を送る。 裸馬は日付が変わるときに奏でる『108回の鐘』が鳴りやむまでの約1時間、普段はヒトの住居へみだりに入れないのだが、特別に該当宗教施設で自由に過ごすことが認められる。 裸馬には、ヒトではなくウマとして既存の枠組みに縛られない自由な振舞いが求められ、この日の振舞いによっては『露馬』への特別昇格もある。 ゆえに裸馬たちはこぞって支配階級の狙いを忖度し、宗教施設に対して奔放に相対する。 
 
 大晦日の一時、全国各地の宗教施設における裸馬たちの行為を編集した映像が『漏るウマ放(ひ)るウマ』で、年代わりの定番番組となっている。


 例外なくお腹をぽっこり膨らませた裸馬が、顔以外は全裸姿なつま先立ちで歩いている。 顔は、目隠し、耳栓で視覚聴覚を封じ、その上で鼻フックで鼻孔を縦長に裂いて嗅覚のみを解放した定番スタイルだ。 裸馬たちは、拡張した鼻をフンフンさせ、誰もが何かを探していた。 というのも裸馬たちは、感覚を封じられると同時に、5Lの牛乳浣腸を施されている。 排泄場所は『施設内に設置されたウマ用おまる』と決められていて、オマルから漂う匂いのみをヒントに、牝馬たちはトイレの在処を探していた。



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