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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第21話『挨拶我慢選手権』-6

『パ、パパ……』

 初めて『アンタ』以外の呼称を呟くも、フイッ、再び男性は俯いてしまう。 相手の細やかな気遣い、遠慮、心配り――ここに至って事に気づくも時すでに遅し。

『お、お願いッ……お願いだからッ!』

 少女は泣きながら男性の脚に縋りつく。 十代の貴重な年月を刑務所で過ごす……考えただけでも悍(おぞ)ましい。 けれど時計の針が刻々と進み、残された時間は5分に満たない。 『ごめんなさいっ、ごめんなさいっ』『いい子になります』『いう事ききます』『あたしはいままで悪い子でした』『毎日ちゃんと挨拶します、挨拶させてください』 月並みな謝罪のオンパレード。 それでも男性が顔をあげないとなると、『お許しください』『何でもします』『いうこと、なんでも聞きます』、男性の脚元にひれ伏して、額を床に擦りつけて許しを乞う少女。 

 ――今更ながら、少女の脳裏を過去の自分が通り過ぎる。 娘として礼儀にのっとって振舞うどころか、敵、他人、軽蔑、反抗を、躊躇うことなく総動員してきた自分の姿だ。 男性は、父親として不足な点などなにも無かった。 自分を含めた家族を大切にしてくれたし、しっかり働いて養ってくれたし、不自由もさせられていないし、望めば大学にもやってくれたことだろう。 血を分けていない少女に対して、男性は精一杯尽くしてくれた。 そんな男性の姿と過去の自分――比較することすら……並べることさえ、烏滸がましい。 男性は、きっと自分が改悛する日を待っていたのだ。 そして『挨拶法』をきっかけに、おそらくは少女が自分を客観視して改める機会を作ってくれた。 それなのに、少女は男性の想いに全く答えないどころか、さらなる罵詈雑言、不遜不適をもって対峙した。 最後のチャンスをフイにした少女を、男性は絶対に許さないだろう。

『ごめんなさい……ごめんなさいぃ……』

既に男性の心情に確信がある。 自分は許して貰えない……そう確信した少女は、それでも謝罪を繰り返した。打算ではなく、他に選択肢の無い、憐れな未成年がそこにいる。 少女謝罪は、誠意を通り越した悲壮感で覆われていた。

 時計の針が残り1分を切った時だった。 

『……許して……お願い……パパぁ……』

『……』

 ずっと無言だった男性が僅かに顔をあげる。 そして土下座する少女の鼻先で、ツイ……、革靴の爪先を僅かに持ち上げた。 男性の動きを察知し、おそるおそる少女が顔をあげる。 革靴越しに、少女と男性が見つめ合う。 男性の瞳に浮かんでいたのは、怒りではない何か全く別の感情――敷いていえば『情』そのもの。 絶望しかかっていた少女の瞳に光りが点る。 少女は男性と靴とを見比べると、ソッと靴の裏に舌を這わせる。 ペロ、ペロ、ペロ……2度、3度、4度と圧しつけられる小さい舐め。 男性は避けようとせず、靴の裏ごしに少女の不器用な舌遣いを受けとめた。 スッ……、革靴を引っ込める。 靴の裏が去った後に少女がみたのは――顔をあげて半開きになった男性の唇ではないか。 ジワリ、それまで必死にこらえていた涙がこぼれ、次の瞬間少女は両目から涙を溢れさせる。 涙を拭おうともせず男性の顔に飛びつくと、もう男性は顔を背けはしなかった。 少女が貪るように舌を伸ばし、男性が少女を受け入れる。 少女の小粒な唇の隙間に、厚ぼったい舌が割って入る。 男性の舌は、これ以上ないくらいに熱かった。 ちゅるり、じゅる……じゅるり、じゅぷ、じゅぶぶっ……! あられもない下品な水音。 2人の唇が濁音を奏で、交接部分から泡立った涎が一筋垂れる。 共に不器用な口づけには駆け引きなどない。 『キス・スイング・シミュレーション』が捉えた映像では、どちらも自分の舌を相手の奥まで差し込もうと、痛いくらいに唇を密着させ、限界まで舌をピンと伸ばす。 お互いが流し込んだ唾液が相手の口腔いっぱいに溢れ――制限時間30分丁度、正式な挨拶が承認された。

 正式な挨拶と認められてからも、2人の挨拶は数分続いた。 最後は男性が無理矢理顔を剥がすように、ねとつく口吻を引き離す。 少女は泣きながら接吻していて、唇が離れてからも、小さくしゃくりあげていた。 男性が静かに部屋を後にした。 振り返ることのない壮年の背中に、『パパ……ごめんなさい……ありがとう……』、深々と土下座した少女が呟いた。



 ……。


 男性には『挨拶の拒否権』が与えられているため、『男性同士の正式な挨拶』は、ほぼ100%発生しない。 一方で『女性同士の正式な挨拶』は必ず1日1回しなければいけないのだが、これがトラブルの下だった。 つまり、互いが『親友であれば』音をたてたキスをする。 知り合いレベルであれば『唾液を塗りっこ』して挨拶する。 『挨拶』で友人関係に序列をつけることになるためだ。 だったら全員『親友』扱いすればいい、なんて素人は考えるが、そんな風に割り切れないのが女子の女子たる所以といえよう。 気に入らなければ不幸になるよう誘導するし、仲間はずれを作れば楽しい――相手の格付けを『挨拶』で落とす、何と便利な手段だろうか?

 市民たちのベロチュウ地獄、まだまだ始まったばかりである。


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