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人類ポニーガール化計画
【調教 官能小説】

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第21話『挨拶我慢選手権』-5

『ほら、さっさと顔あげなさいよ。 嫌だけどキスしてあげるからさ』

 顔を強張らせながら催促するも、やはり男性に動きはなかった。 時計の針は残り10分を示している。 あと10分以内に『正式な挨拶』を交わすことが出来なければ、少女はこのまま懲罰行きだ。 舌を伸ばしてみたり、下から唇に吸い付こうとしてみたり、髭が濃い頬に自分の頬を擦り寄せて顔をあげさせようとしてみたり……けれども全然上手くいかない。 『早くしろっていってんでしょ!?』『ほら、口を開けてよ、はやくっ』『何考えてんのよ!』『ノロマ、グズ、変態ッ』 焦りと苛立ちに任せて罵声を浴びせるも、やはり男性は全く動こうとしなかった。 事ここに至り、ようやく少女が事態の深刻さに気付く。 男性は……凹んでいるから俯いているわけじゃない。 意志をもって、敢えて顔をあげないのだ。 ふらり、椅子の傍らで少女がよろめく。

『まさか……わざと……なの? 『拒否権』を使い忘れたんじゃなくて、あたしを罰したいから……だから、わざと『拒否権』を使わなかった……そういうことなの……?』

 少女の呟く。 すると、それまで一貫して顔をあげなかった男性が顔をあげた。 少女が散々に貶すような、意志薄弱な男性の顔ではない。 雑多な苦難を経験し、逞しく乗り越えてきた壮年男性の、静かな怒りに燃える瞳が、そこにはあった。 

『つっ……!』

 少女が表情を引き攣らせる。 母親の再婚から一貫して穏やかだった男性が、おそらく初めて見せた怒りの表情――普段とのギャップを差し引いたとしても、視線を向けられた者を怯えさせる迫力に満ちていた。 ジッと少女を見据え、一ミリも視線を逸らさない。 

『え……え……あ、あれ……?』

 逆に少女はといえば、憐れになるほど目を見開き、四方に視線を彷徨わせる。 彼女の中で、全く想定していない事態。 義理の父親は、弱く、クサく、気持ち悪く、ウザったく、そして完全に彼女より格下の存在なハズだ。 何をいっても、何をやっても文句を言われる筋合いはないし、同じ屋根の下で暮らしてあげてるだけでも、彼女は感謝されこそすれ叱られる道理はないハズ……ないハズだのに、今、事態は最悪の方向に転がっている。

『……まさか……お、怒ってるの……?』

 コクリ。 しばしの沈黙を経て呟いた少女に対し、静かに、けれど力強く頷く男性。 ルール上男性が喋ってはいけないが『尋ねられたことに意志表示してはいけない』という決まりはない。

『あたしと……挨拶してくれないってこと……?』

 コクリ。

『あ、あたしが罰になってもいいの……? え、ええっと、一応説明しとくと……あたしとキスしてくれないなら、あたし、このあと刑務所に入れられちゃうんだけど……そ、それでもいいの?』

 コクリ。 男性は躊躇うkとなく、今までと同じ調子で頷く。 

『……ッ!』

 息を呑む少女。 自分が相手を見誤っていたことに気づいた瞬間だ。 男性が『甘い』と思っていた。 男性が『甘い』から『少女に対して強くでれず、叱ることもなく、従順で、情けない』と……男性に対しては『何をしてもいい』と思っていた。 けれど男性が少女に甘かったのは、弱さではなく優しさが所以。 少女の脳裏に電流が走る。 真に甘えていたのは、男性ではなく少女自身――……。



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