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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈蜉蝣の飛翔〉-1





まだ影の色は薄くて長く伸び、陽射しの強さは本来のものには達してはいない。
温いというよりは涼しい風が、乳白色の校舎へと続くポプラ並木をサワサワと騒がせている。


親の自動車で送られてくる者も居れば、自転車で来る者も居る。
駐輪場は生徒達で犇めき、それぞれに仲良しグループを形成して歩いていく。

楽しげに笑う声や、子供のようにはしゃぐ声……喧しくも校舎に入ろうとする生徒の中に、一人だけ俯く少女の姿があった。



……やはり花恋は言えなかった。


一度は捨てられた〈女性〉が、再び「この人となら」と想った男性と一緒になれた。
その結末が愛娘の不幸を招いたと知ったなら、どれほど嘆き哀しむだろう……と考えると、どうしても打ち明ける気持ちにはなれなかった。


いつも通り、何事も無かったように……思わず溢れそうになる涙を必死に堪えながら夕食時の団欒を過ごし、そして慌ただしい朝食も努めて明るく振る舞って高校へと向かったのだ……。


『孝弘ったらドタキャンしたのよ?有り得なくない?』

『わ〜。それ最悪ぅ』

『昼休みに呼び出してガツンと言っちゃう?私らも協力するからさ』


純白な半袖のYシャツに黒と銀色のチェック柄のリボン。
そして膝上までしかない紺色のスカートは同級生の二年生の制服だ。

同じシンプルな制服を着た花恋は平和な愚痴を受け流しながら、校舎へと入る。


『よッ!昨日はゴメンな』

「………」


ポンッと肩を叩かれ、花恋は振り向いた。
そこには何も知らない英明が、いつものようにニコニコと笑っていた。


『いや〜、親戚の叔父さんなんだけどさ、まさか急になあ……家族ぐるみでお世話になってた人だから、行かないワケにはいかなかったし……ホントに悪かった、この通り』


英明は拝むように手をあわせ、ペコリと頭を下げる。

いつもなら、そんなに怒りはしない。
可愛らしく頬っぺたをプゥと膨らませて、そっぽを向いて困らせるだけだ。
しかし“今回だけ”は花恋は怒りを抑えられなかった。
そして言ってはいけない言葉が、口から吐いて出てしまった。



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