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SM学園・行事幕間
【学園物 官能小説】

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第13話 学園祭、そして…-2

 ……。


 幼年学校を卒業してから、私たちの生活は一変しました。

 『人間』から『牝』へと扱いが代わり、基本的人権や尊重、敬意や配慮といった生活の要件は根こそぎ奪われました。 母親と別れ、親友と別れ、生まれ育った町と別れ、厳格な上下関係に支配された住処があてがわれました。 プライドも、自尊心も、矜持も、誇りも、意地も、反抗心も、愛着も、そして名前も。 何もかもを失った代わりに、猥らですぐに絶頂できる身体を手に入れました。 状況に応じて媚諂い、自分を貶(けな)し、辱め、嘲笑し、嗤いに供し、おとしめる術を学びました。 

 そんな、従来の価値観すべてを否定する学園だからこそ、学園の外――卒業したあとの社会――に希望を求めるのは自然なことだと思います。 良くいえば達観した学園生活を過ごそうと、悪くいえば学園生活の全てを諦めて受け入れようと考え、早く学園を卒業することを目的にして、日々のカリキュラムに対応してきました。 必然的に、学園が求める行動を取ること、学園に劣等生のラベルを貼られないことばかり考えるようになっていきました。

 でも、それだけじゃありませんでした。

 腐っても『学園』の名を冠した施設です。 青春の象徴たる『学び舎』です。 学園で取り組んできた一連のカリキュラムや、2号教官から与えられた指導の数々が結晶して成果になる場所は、ちゃんと用意されていました。 それが『学園祭』の真の意味のような気がするんです。 

 学園が用意する無理難題なカリキュラムは枚挙に暇がありません。 じゃあそれらは矢鱈めったら私達を苛めるためだけにあるのかというと――どうなんでしょう。 一概にそうともいえない気がするんです。 うまく言葉に出来ないし、確信なんて皆無ですし、みんなに打ち明ける気にもなれませんが、確かにそんな気がします。 荒唐無稽で不条理な後付け理由じゃなくて、きちんと説明してもらえれば私にも心から納得できるような、そんな『学園の存在意義』『学園の教育目的』みたいなものが――学園のどこかに息をひそめてる。 誰も教えてくれないし、見つけることも限りなく難しい概念。 そんな片鱗が、和気藹々と後夜祭に備える私達の背後に隠れていたら、どんなに素敵なことでしょうか。 そんな概念があるかもしれないと考えるだけで、人前で取り組まされるマンズリの指使いにも、気合の入れ甲斐があるってもんです。 

 ――とまれ、いくら考えたって結論が出るわけありません。 ふとキャンプファイアーの隣を眺めると、C−2組のみんな車座になっていて、何人かが私に大きく手を振ってます。 あれは……私を呼んでるんでしょうか? 【30番】さんも、【29番】さんも……ずっと文句ばっかり言ってきた【11番】さんも、みんなして明らかに私を呼んでくれています。 そうと分かると現金なもので、1人で物思いに沈むのはこれくらいにして、私もみんなの輪の中に入りたくなってきました。 『メイン展示』でも『清流噴水』でも、『ウンチ噴水』でも。 呼び方は何でも構いません。 みんなで成し遂げた大成功の余韻を、他でもないみんなと噛みしめないでいるなんて、よくよく考えてみれば、もったいないお化けがでちゃいます。 みんなと仲良くしたところで学園での評価が上がるわけじゃありませんが……そんな打算、考えるだけ野暮なんですよね、きっと。 後夜祭に火が点(とも)る瞬間を、みんなと一緒に見つめたい――今の私の、偽らざる本心です。 

 そう自覚したとき、私の細い脚は、自然とみんな目指して駆けていました。 


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