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SM学園・行事幕間
【学園物 官能小説】

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第10話 模擬エスコートB-1

〜 2番の学園祭 ・ エスコート練習 〜

 案内(エスコート)の予行演習に入ってから1時間半が過ぎました。 最初こそ菱縄も高手小手縛りも苦痛だったものの、1時間を過ぎた辺りから節々が麻痺したのか、どうということはありません。 辛いところは……如いていえばアナルですかね。 重たいものはみんなアナルプラグのフックに懸っているせいで、どんどん『引っ張られる感』が増しています。 でも、普段のカリキュラムに比べれば、全然我慢できるレベルです。 

 C棟にはBグループ生が演出する『特殊系』の模擬店があります。 1組教室では『お化け屋敷』の看板が下がり、私達が普段使っている2組教室は『手作りアクセサリー』、最後の3組教室は『マッサージルーム』となっていました。

「定番っちゃ定番でも、入りたくなるから不思議しょや」

 そう呟いた【A2番】先輩が真っ直ぐむかった『お化け屋敷』。 廊下に面した窓すべてに黒幕がかかり、おどろおどろしい緑や赤の手形がベタベタと並んでいます。 『お化け屋敷』……うーん、学園にしては子供っぽいというか、幼稚というか……個人的にはしっくり来ません。 『お化け』というと、Bグループ生に求められている『上品さ』との相性も良くないですし、学園祭の出しものとして成立するんでしょうか? いや、変な予想は止めときます。 こと学園に関しては、どんな予想をしたところで常に斜め上をいきますから。

 入口にある受付では、お化け屋敷について微笑みながら諸注意を受けます。 曰く『2人1組で約50メートルの通路を歩く』『ランタン1つをもって、出口まで一本道を進む』『中は暗いので走らない』『手荷物一式は受付で預ける』『悲鳴をあげたり、足がすくんで動けなくなったらリタイア』『原則として中では一切喋らない』――他にもいくつかありましたが、いたってオーソドックスなルールです。 股間にぶら下げた諸々の荷物を外してもらい、ようやく腰が軽くなりました。 ランタンを掲げた【A2番】先輩が、首輪から伸びたリードをクイクイと引きます。 ということは、私もお化け屋敷にいかなくちゃいけないんですか……得意な分野じゃないんだけど……しょうがないですね。 衝立(ついたて)で仮設された通路に足を踏み入れると、中は本当に真っ暗です。 ゴクリ、唾を呑み込むと、先輩の背中に隠れるように歩を進めました。

 ……。 
 
 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 5分後。 ようやく長かった通路が終わりました。 出口で『ランタン』を返却し、預けた荷物を返して貰います。

「ありがとうございました♪ またお越しください〜」

 爽やかなお礼の言葉に送られて、【A2番】先輩と私は『お化け屋敷』を後にします。 チラリ、心なしか肩を落とした先輩に横目を送ると、先輩は苦虫を噛み潰したような顔で、眉間に皺を寄せていました。

「どこがお化け屋敷だか……ただの悪趣味な集団だべさ……」

「ホント……気持ち悪かったです……」

 つい、先輩後輩という立場を忘れて、先輩の呟きに相槌をうってしまいました。 基本的にエスコートの補助係としては、荷物持ちという立場上お喋りは控えた方がいい気がします。 でも、ついさっき体験したお化け屋敷の内容を喋りたい衝動が優りました。

「最後の『鏡』が最悪でした……鏡を覗いたタイミングで、後ろから女の人が出てくるだけでも怖いのに……いきなり口を開けたら、中に芋虫がウヨウヨしてるんですよ……なんなんですか……」

「それをいうなら初っ端のアレもキツイしょや。 壁にオマンコがズラーッと並んで、全部のオマンコにでっかいクモが張り付いてるところ。 てっきり玩具とおもっとったのに、ランタンを近づけたらカサカサって……あれ、全部本物のクモが生きとってよ」

 先輩も、別段咎める風もなく、ため息交じりに呟きます。

「いきなりヒトが落ちてきた時も、怖すぎです……怖すぎて声出ませんでした」

「リアル過ぎて逆に引くわ……どこまでメイクか知らんけど、痣や血はまだしも、身体中に蛆を貼りつけるって……虫がいるだけでも気色悪いのに……」

「あの死体役の先輩の顔……夢に出てきそうです……。 頬っぺたは嗤ってるのに、目だけぽっかり表情が抜けてて……焦点がどこにもあってなくて……」

 私達が体験した『お化け屋敷』を一言でいうと、『笑顔』と『蟲』です。 少し進むたびに仕掛けがあって、Bグループの先輩が身体を張って悲惨なシーンを再現していて――例えばぶら下がった死体、溝に嵌った死体、腐乱死体等々――どれも不気味な笑顔を浮かべてジッとこちらを見ているんです。 それだけでも怖いのに、時々笑顔が『ニコッ』と動くのが、何ともいえず背筋を寒くしてくれました。 よく見るとどの先輩も、身体にミミズや芋虫、蛞蝓や蝸牛を這わせていて、酷い時は大きなクモやゴキブリまでいたんです。 唐突に表れる気持ち悪いシーンの連続に、私達は逃げるようにして『お化け屋敷』から飛び出したのでした。 

「うつ伏せになってた人も、通り過ぎる時だけ跳ねるんですもん……動きが変すぎです」

「なしてさ。 それをいうなら、いきなり追っかけてきた子も走り方が歪だったっしょ……ゆるくねえもん。 全員酷すぎでファイナルアンサーしょや」



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