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大沢商事の地下室
【SM 官能小説】

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秘めた願望-1

「この前はご苦労様」
 里子が大沢の事務所を訪れている、ギャラを受け取りに来たのだ。
「ありがとうございます、私がやりたくてやってるようなものなのに」
「数えんのかね?」
「信用してますわ」
 里子がバッグに封筒をしまっている時、ノックの音がした。
「入りたまえ」
「失礼します」
 お茶を運んできたのは幸恵だった。
 大沢は秘書を置いていないが幸恵は実質その役目を担っている、大沢に直接会いに来る客があった時にお茶を運んだり、大沢の傍らでスケジュールを確認したりするのは幸恵の役目、物腰の柔らかさ、慎ましさが誰にも好印象を与えるからだ。
 来客が幸恵をちらちらと見るのはいつものことだが、里子は値踏みするかのようにじっと幸恵を見る。
「何か?……」
「あなた……下着を着けてないでしょう?」
 幸恵ははっとした表情になる。
「まさか……ラインがでるのが嫌なのでTバックにしてはいますけど……」
「でも、私にはわかるの……立ち振る舞いや表情で」
「そんなこと……」
「私が何者なのかは知ってるんでしょう?」
「……はい……」
「私、間違ってる?」
「……」
「ごめんなさい、社長の前だったわね」
「……さすがです……確かに下着は……」
「スリルを味わいたいが為ね?」
「……はい……」
「でも素敵な物腰よ、今の女性が失ってしまったしとやかさを感じるわ」
「ありがとうございます……」
「あなたを責めてみたいわ」
「……私は……Mというわけでは……」
「そうかしら? マイクロミニを穿いたり胸を大きく開けたりするのとは違うわ、いわば密かな愉しみ、だけどそれが露見した時の衝撃は比べ物にならないわ、それを承知で下着を着けないのはM性がないとは言えないと思うけど」
「…………」
「想像してみて……山奥であなたは裸……山奥と言っても無人島じゃない、誰か通りがからないとも限らないわ、そう、裸なだけじゃなくて縛られてもいる」
「……」
「そして周りには私と何人かの男性、あなたを責めようとしている」
「……」
「指やバイブで感じさせられるの、屋外で、それも縛られて……誰か通りがかりでもしたら……」
「……」
「顔が紅潮してきたわ」
「……もう止めて下さい……」
「ごめんなさい、職業病ね、M性があると見たら放っておけないの……でもあなたは真面目な事務員だものね」
「……感じました……」
「え?」
「……想像したら……濡れてきちゃったんです……」
「そういう目にあってみたい?」
「……正直なところ、とんでもないことだと思います、いくら山奥でもそんな事をされるのは……でも……」
「想像すると興奮を抑えられない……?」
「……はい……」
「大沢さん、別荘はお持ちで?」
「いや、別荘と言うようなものは持っとらんよ、管理が面倒なのでな、家族もおらんし……だが山奥の土地なら会社で持っとらんこともない」
「どのような土地ですか?」
「ダム湖に沈むことが決まっている村でもう誰も住んではおらん、群馬だからそう遠くもないしな、立退き料をもう少し吊り上げてから手放そうと思ってな、まだウチの名義のままだ」
「人がいない村……絶好ですね」
「時折調査の役人が来てはいるようだが……」
「人が来る可能性はゼロではない……ますます絶好ですね」
「だがな、里子、幸恵は事務の仕事で採用しているわけだ、わしから強要は出来ん……」
「それは正論ですわね……でも彼女が望むなら?」
「それなら話は別だ、わしも大いに興味はある」
「いかがかしら?……一度そういう体験をしてみるのは」
「……」
「私は提案をしてみただけ……ごめんなさいね、変なこと言って……さてと、お店に行かなくちゃ、お邪魔しました」
 里子が立ち上がる。
「待ってください」
「なに?」
「社長も聞いて下さい……そういう事を実際にしてみたとして……秘密にしていただけますか?」
「当然だ」
「もちろんよ」
「会社にこのまま勤めていても?」
「ああ、もちろん構わない、仕事振りには大いに満足しておるしね」
「数人の男性と仰いましたが……」
「それはあなた次第よ……大沢さんは外せないけど、あとは私の助手は最低一人必要ね」
「里子さんと社長と、もう一方、里子さんの助手の方ですね?」
「ええ」
「……それなら……お願いします」
「野外緊縛体験をしてみたいということね?」
「……はい……本当のところ、それを夢見てました、誰にも言い出せませんでしたけど……ズバリ言い当てられた気持ちです……」
 応接室に奇妙な沈黙が流れる……。
「本当かね?……幸恵君……」
「はい……」
「あ……日曜はお休みじゃないんでしたっけ……」
 里子が『いけない』という風に言う。
「なに、構わんよ、幸恵君は運転免許持っておったな?」
「はい」
「わしの運転手として出かけることにすればいい」
「それはいいアイデアですね、私の車は二人乗りだし、井上君は車持ってないし……レンタカーを借りる手間も省けます」
「それじゃ、決まりだな、次の日曜でどうだ?」
「ええ、それでいいですわ……幸恵さん、よく思い切ってくれたわ」
「いえ……願望は内に秘めて表に出さないように気をつけていたつもりだったんですが……流石にプロですね、見透かされました……カミングアウトして今はすっきりした気分です、日曜が待ち遠しいです」
「お天気だといいわね」
 そう付け加えた里子は、遠足を待ち望む子供のような表情になっていた。


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