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大沢商事の地下室
【SM 官能小説】

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貞操観念の果てに-4

 よほど落ち込んだ顔をして歩いていたのだろう、絢子は覚醒剤の売人に呼び止められ、手を出してしまう……社会通念に厳密なまでに忠実な普段の絢子なら考えられないことだが、今は心の半分が抜け落ちている、そこを埋められなければ真っ直ぐに歩くことすらおぼつかないような、藁にもすがる気持ちだった。
 覚醒剤を使うと、もやもやと晴れない気持ちがすっとし、僅かな時間だけだが心の半分も埋まる……徐々にだが、クスリを使う頻度が増して行ってしまう。
 それと同時に困ったことが起きた。
 心の半分が埋まるのは良いが、そこにひそかに根を張っていた肉欲がむくむくと大きくなってしまうのだ。
 絢子はその処理に困惑した……最初は指で、その内にローターを使うようになり、バイブにまで手を出した、だが自分で自分のあそこを可愛がれば可愛がるほど、それは彼を欲してしまう。
 そのうちにお金が底を尽き始める、もはやクスリなしでは一日も居られないのに、それを購うお金がない……売人に言われるまま体を売るしかなかった。
 いかがわしい店に登録され、電話で行き先を指示される、そこには客が待っているのだ。
 相手はお金を払っている客だ、性行為を拒むわけには行かない、しかし、気乗りがしていない絢子を抱くのは砂を噛むように味気ない、客からの苦情が相次ぎ、絢子はクスリを与えられて客の下へ送り込まれるようになった。
 クスリをやっている時の絢子は心の半分も埋まっている、しかし、もはやそこに彼は存在せず、根を張った肉欲だけが覆い尽くしているのだ。
 クスリが入っている時、体は敏感になる、元々の方の半分の心は売春と言う行為を否定するのだが、躰が反応し始めてしまうともういけない、肉欲がはじけ、歯止めが利かなくなってしまうのだ。
 そうなると絢子はどうにも止まらない、目を剥き、よだれを流し、めちゃめちゃに腰を振り、あられもない大声を上げて快感をむさぼる。
 中毒になっても大分経つ、食欲は落ちる一方で体は弱っているから何度も激しく達すると白目を剥いて気を失うことも珍しくない。
 そんな絢子を何度もリピートする客も居るのだが気味悪がってしまう客も居る、クスリをやっているのでは? とある客が疑問を呈して来たからもういけない、売春という手段も失ってしまった絢子にはもはやクスリを手に入れる術がなくなってしまった。
 
 
 
「クスリが欲しいんだろう?」
 門村の問いに絢子の答えは一つしかない。
「ただ、何もなしに金をやるわけにも行かない、SMショーに出る気はないか?」
「SMショー……」
 恐ろしかった……だが、心の底で期待も頭をもたげてくる……どんなに感じさせてくれるんだろう……きっとバイブをめちゃめちゃに突っ込まれ、大勢の男たちに廻される、その快感を想像しただけで気が遠くなりそうな気がした……そんなことをされたら死ぬかもしれない……体が弱っていることは分っている、耐え切れないかもしれない……。
(それならそれでいい……)
 絢子はそう思った、この地獄から抜け出すのに『死』は手っ取り早い方法だ、目くるめく快感の中で死ねるのならそれはそれでいい……)
「わかりました、お願いします」
 絢子はそう答えていた。 


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