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大沢商事の地下室
【SM 官能小説】

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絢子のショー-1

 ショーが予定されていた日曜日、里子は1時間ほど早めに大沢の事務所を訪れた。
 入ってすぐの応接スペースに大沢が一人でパイプをくゆらせている、大沢は一代で成り上がった者特有の成金的な趣味もちらつかせるが、落ち着いた、本物の紳士のような一面を見せることもある、パイプをゆっくりとくゆらせる姿は英国紳士のよう、座っているソファもシンプルな中にも質の高さを感じさせる代物だ。
「早いな……まだ2〜3人残って仕事しとるよ」
「まずかったでしょうか……?」
「いや、構わんよ、第一、里子がここに来るのは初めてじゃないだろう?」
 大沢の色好みは社員に知れ渡っている、大沢自身、それを隠そうともしていないのだ。
「いや、むしろ都合がいい……気を効かせて帰ってくれるだろうよ」
 大沢の言うとおり、残っていた社員も仕事を切り上げて帰り支度を始めた。
「社長、お先に……」
「ああ、お疲れさん」
 最後の社員を見送ると大沢は立ち上がった。
「結構いい出来だぞ、二日で改装したにしてはな」
 里子を従えて地下に降りて行き、ドアを開けて里子を招き入れる。
「どうだい?」
「なんて本格的な……」
 里子は呟いた……低いながらステージが設けられ、その床には塩ビシートが張られている、SMショーに使うには掃除のしやすさは重要なのだ、壁はコンクリートむき出しのままだが、むしろ雰囲気を盛り上げる。
 そしてその設備、天井から何本ものフックが下がっているのは予想していたが、それらはチェーン操作で上下できるようになっていて、コンクリート打放しの天井に取り付けられたレールに沿って可動式になっている、それだけではない、十字架、ギロチン台、婦人科用診察台まで用意されている。
「一晩の為にここまで?」
「一晩じゃないさ、門村さんとも話したんだが、生贄候補の女はいくらもいるそうだ、今日の女、絢子と言うらしいが、その女だってクスリを止められない限り何度もここに来ることになるだろうしな」
「定例になる……そういうことですか?」
「定例とまではいかんだろうがね、不定期にはちょくちょくあるだろうよ……里子はどうだね?」
「もちろん……いつでも、何度でも」
「そう言ってくれるだろうとは思っていたよ、助手は頼んでおいてくれたかね?」
「ええ、もう来る頃ですわ、30分前に来るように言ってあります」
「そうか、椅子を並べてもらわなくちゃいかん、同好の士は5人集まったよ、門村さんを入れて6人だ」
「お好きな方が多いんですのね」
「みんな里子のことは知っておったよ、あの店に行ったことのある連中ばかりだ」
「それならきっと私も覚えてますわ」
「ああ、そうだろうな……ただ、夫婦で来るものもおるよ、一組だが」
「まあ……」
「プライベートでもSMしてるらしいな、参考にしたいんだろう」
「それは面白いです……奥様にも責めに参加してもらいますわ」
「それは気づかなかったな……面白いアイデアだ」
「女のほうが陰湿ですから……」
「ははは、里子が言うと恐ろしいな」
「冗談じゃありませんのよ、男性は性欲の対象としてM女を見ますけど、女性はそうじゃありませんもの」
「どう見るんだね?」
「私のようなSなら純粋に責めの対象、泣き喚くほどに興奮しますのよ、そうでなければ蔑視の対象、犬猫……いえ、ブタのように扱いますわ」
「笑い事ではなく恐ろしげだな……いや、むしろ楽しみだよ」

 しばらくして助手もやって来た、里子の店のボーイで井上と言うがっちりした大男だ。
「彼にも責めさせるのかね?」
「基本的には力仕事を……挿入が欲しい時はお客様に」
「ああ、でも夫婦連れはそうはいかんだろうな、あとの三人も結構な歳だ」
「どなたも手を上げられなければ……彼は巨根の持ち主ですのよ」
「ほう?」
「びっくりする位でしたわ、彼を加えた責めのショーをやってみたかったんです」
「なるほど、益々楽しみだ」


「大沢さん、連れてきましたよ」
 門村が絢子を伴ってやって来た。
 なるほど、広い額、切れ長の目が理知的な堅い雰囲気を醸している、薄い唇が薄幸を象徴しているように見えるのは気のせいだろうか……中毒はかなり進んでいると見え、ひどく痩せている……。
「おいおい、大丈夫か? 死にゃせんだろうな?」
「まあ、その辺は里子ママにお任せしますよ、ベテランのプロだ、限度は分るでしょう」
「構いません……」
 生気なくうなだれていた絢子がポツリと口を開いた、聞き取れないほどの小さな声だ。
「え?」
「構いません……死んだら死んだで……」
 この言葉には大沢も、里子でさえもドキリとする。
「生きていても地獄……感じながら死ぬのであればそれはそれで……」
「あなたを感じさせようとしているわけじゃないわ、泣き叫んでもらうわよ」
 里子がちょっとイラついたように言う。
「それでも構いません……生きていても仕方ありませんから……」
「辛い思いをしながら死んで行ってもいいの?」
「報いですから……」
 門村はある程度知っているのだろう、絢子の言葉に頷いている。
「どんな事情があるのか知らない、私には関係ないの、だからこれ以上は聞かないわよ」
「ええ……」
「それに……死なせはしないわ、それはまずいの、わかるでしょう?」
「はい……」
「数日は起き上がれないほど責めてあげるわ、でも死なせはしない、辛いわよ」
「はい……それはそれで……」
 里子はそこで会話を打ち切った、それ以上聞くと矛先が鈍ると感じたようだ。
「大丈夫かね?」
 大沢が里子に耳打ちする。
「ええ……限度は分ります……ぎりぎりまで責めて見せますから」
「まあ、死なさない程度にな」
「……その一歩手前が最高のSMですのよ……」
 里子が浮かべた笑みに大沢はゾクっとさせられた。


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