下-3
「それはさくらが心配することじゃない」
「え?」
「毎朝さくらに会いたいから人より残業した。
人と同じに帰ったとしても、10時だ。さくらに会えないだろ?」
「う・・・ん」
「じゃぁ、終電まで残業するから、朝は普通に来る。
こう宣言して、上にOKもらった」
「う、うん」
「毎朝、一緒に通勤出来て今日も頑張れるぞって思えた」
「うん」
「そのために毎朝、会いたかった」
「うん」
「俺の考え間違ってる?」
「・・・・」
「無理?しちゃ悪いか?さくらに会うために無理して何が悪い?」
「う・・・ん」
「あの時間のために、人より残業するからって言ったのは俺だ。
それほど俺にとってはあの2分は大事な時間だよ」
「うん」
「人の言葉で揺れるな。惑わされるな」
「・・・・」
「俺たちはまだ、お互いに何も知らないし
会社も違うからお互いの仕事ぶりも忙しさも分からない」
「うん」
「だから、俺の言葉だけを信じてろ」
「・・・・」
「他の奴の言葉で気持ちを揺らすな」
そう言って私をぎゅっと抱きしめた。