岸-4
矢野さんは私をじっと見つめて、
わざとらしく軽くため息をついた。
「カラダが目当てなんだ」
その一言はショッキングだったらしく
その座敷にいる人が一斉に驚いた。
「矢野さんひどい!」
「矢野さん〜。それ本人の前で言いますか?」
「矢野さんひっど〜い」
それぞれの言葉に、ニヤッと笑うと
「逆だ」
と静かに言った。
「さくらが、俺のカラダ目当てだ」
「はぁ?」
「俺さ。脱いだらすごいんだよ。な、さくら」
「え・・・あ、うん」
「ほら。さくらは、俺のカラダ目当てなんだよ」
ご丁寧に大きくため息までついた。
「あ、どれだけイイカラダか見る?」
そう言いながら、カチャカチャとバックルを外して
ワイシャツをズボンから引き抜こうとした。
「ちょっと!」
その行為を必死で止めると
「ほら。自分だけの俺のカラダをみんなにご披露するのはイヤらしい」
再びわざとらしくため息をついて
ワイシャツをズボンの中にたくし込んだ。
大笑いの男性陣と苦笑いの女の子たちで
座敷が埋まった。
楽しい席でおいしいものを食べて
「矢野さん、トイレに行ってくるね」
そういって席を立つ。
トイレから出たその場所に
二人の女の子が立っていて
明らかに、私を待っているようだった。