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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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1.自分との決別-1

 将太の母親香代が家を出たのは35歳の時。5月、息子の将太が高校一年生の時だった。

 長く病を患っていた夫の稔が亡くなり、葬儀を済ませて初七日が過ぎた頃、黒田厚子と名乗る見知らぬ女が香代を訪ねた。
 その寸詰まりで小太りの女は、稔について耳に入れたいことがあると言って香代を近くの喫茶店に連れ込んだ。

「あの、お話って……」
 香代は不安げな目でテーブル席の向かいに座った厚子を見た。
「どうか落ち着いて聞いて下さい、香代さん」
 馬鹿丁寧な口調がかえって香代の不安を募らせた。

「貴女のご主人の稔さんには、実は借金があります」
「えっ?」
「貴女にも、ご家族にもずっと秘密にしていらっしゃいましたが、お亡くなりになった今、それを返済して頂くために貴女に打ち明けなければならなかったんです」
 厚子は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「い、一体いくらの借金が……」
 テーブルに肘をついた厚子が言いにくそうに、くぐもった声で言った。
「400万円……です」
 香代は青ざめた。
「しかも、」厚子はたたみかけるように言った。「それはご家族に相談しづらい借金なんです。つまり――」
 香代は言葉を失い、ごくりと唾を飲み込んだ。
「稔さんは生前、家族に内緒で愛人をもうけていました」
 ええっ?! と思わず叫んだ香代に厚子は静かに聞けというジェスチャーをして続けた。
「その女の後ろには暴力団がいて、それに気づいた稔さんは女と別れようとしましたが、手切れ金として組がその金額を要求していたのです。要するに美人局ですね」
「うそ……」香代は涙ぐんで口を押さえた。
「さすがにこのことは妻である貴女に打ち明けることはできませんし、ご家族にも」
 厚子は静かに目の前のコーヒーカップを持ち上げた。

「あの……どうしたらいいんでしょうか……」
 香代はすがるような目でテーブルに身を乗り出した。
「稔さんはその後、密かにお友達の林さんという方に連絡をとっておられた。ご存じですか? 高校時代からのご友人だとか」
 香代は首を振った。
 小さく肩をすくめて厚子はカップをソーサーに戻した。
「その林さんは弁護士をされていて、親身になってご主人の相談に乗ってあげていました。林さんは私たちの事務所ともおつき合いがありますから、私たちは貴女が林さんとお話ができるように場を設定するつもりでいます」
「その林さんが詳しいことをご存じなのですか?」
 厚子は大きくうなずいた。「彼も是非貴女とお話がしたいと仰ってました」
「会わせて下さい」
 香代は悲痛な声で言った。
「もちろんです。年頃の息子さんがいらっしゃるのでしょう? でもこんなことを知られたら家庭崩壊」
 厚子は伝票を持って立ち上がった。
「私たちが力になります。どうか安心して下さい、香代さん」
 厚子はにっこりと笑って、放心して座り込んだままの香代の肩を優しくたたいた。




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